なきむしぼうや/エルサ・ベスコフ

エルサ・ベスコフ作・絵、石井登志子さん訳の『なきむしぼうや』(原題:Sagan om Gnällmåns)は、1905年にスウェーデンで初版が発行され、日本語版は2002年に徳間書店から出版されました。気に入らないことがあると、すぐ泣きわめいていた“なきむしぼうや”が、魔法使いのおばあさんに魔法をかけられ、本当に泣きっぱなしになってしまうお話です。自分の気持ちと向き合いながら成長していく姿は、子どもたちにとっても共感できるはず。ベスコフならではの温かな語り口と、やさしい色合いの挿絵が魅力的な一冊です。

略歴

エルサ・ベスコフ

エルサ・ベスコフ(Elsa Beskow, 1874–1953)は、スウェーデン生まれの絵本作家・画家です。ストックホルム出身で、美術学校で学んだ後、雑誌の挿絵を描きながら創作活動を始めました。1897年に発表した『ちいさな ちいさな おばあちゃん』で絵本作家としてデビュー。その後も『おひさまのたまご』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』など、自然と子どもたちをテーマにした作品を多く生み出しました。彼女の作品は、温かなストーリーと繊細で優しい水彩画が魅力で、今も世界中で読み継がれています。

石井 登志子(訳)

石井登志子(いしい としこ)さんは、日本の児童文学翻訳家。東京女子大学卒業後、長年にわたりスウェーデン児童文学の翻訳を手がけており、特にエルサ・ベスコフやアストリッド・リンドグレーン作品の日本語訳で知られています。絵本や児童小説のほか、スウェーデン文化や暮らしに関する紹介文も執筆。温かくリズム感のある翻訳は、原作の雰囲気を壊すことなく日本の読者に伝わるよう工夫されています。ベスコフの世界観とも相性が良く、多くの読者に親しまれています。

おすすめ対象年齢

『なきむしぼうや』は、3歳ごろから小学校低学年向けの絵本です。感情の起伏が激しくなりがちな時期の子どもたちに、泣くことや自己コントロールについてやさしく伝えられる内容。読み聞かせにもぴったりで、心の成長をサポートする絵本です。

レビュー

この絵本は、感情に素直すぎる「なきむしぼうや」が、ちょっぴり苦い経験を通して成長していく姿が描かれています。泣くことは悪いことではないけれど、そればかりだと大変なことになる、というメッセージがユーモラスに描かれていて、子どもたちにも自然に伝わる内容です。エルサ・ベスコフのやわらかい筆致と、ちょっとした教訓が優しく重なっていて、親子で会話が弾みそうな絵本。読み終わった後、きっと「泣きすぎちゃだめかもね」と思えるような、あたたかい作品でした。