さくらのさくらちゃん/中川ひろたか

中川ひろたかさん作、植垣歩子さん絵の『さくらのさくらちゃん』(2011年、自由国民社)は、春・4月の入学シーズンにぴったりの心温まる絵本。主人公は、庭の桜の花びら“さくらちゃん”。小学校に向かう新一年生・ひろちゃんの頭にひらりと舞い降り、一緒にドキドキの入学式に出発します。町中の桜、新しい友だち、緊張した子どもたち…はじめての体験がいっぱいの春の日を、やさしく、ユーモアたっぷりに描いています。読むと背中をそっと押してくれる、春のはじまりにぴったりの一冊です。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

植垣 歩子(絵)

植垣歩子さんは、1978年神奈川県生まれで、小学6年生のときに描いた絵本『いねむりおでこのこうえん』(小峰書店)で第1回DIY創作子どもの本大賞を受賞し、デビューを果たしました。和光大学芸術学科日本画専攻を卒業後、一度は大学で日本画の大きな作品に取り組みましたが、のちに介護の仕事を通じて“人の暮らし/暮らしてきた人々”に惹かれ、絵本制作へと戻っていきます。2002年には『6人の老人と暮らす男の子』で第3回ピンポイント絵本コンペ優秀賞を受賞、その後『すみれおばあちゃんのひみつ』(偕成社)や『うたこさん』(佼成出版社)、『アリゲール デパートではたらく』(ブロンズ新社)などで人気を博しています。作風は、台所や日常の温かな場面を細やかに描きながら、ユーモアと優しさにあふれた“のんびり”した絵が魅力です。

おすすめ対象年齢

対象年齢は4歳〜小学校低学年くらいがおすすめです。入学や新学期に向けての緊張やワクワクがリアルに描かれているので、これから小学校に入る子や、新しい環境に飛び込む子どもたちにぴったり。親子で一緒に読むことで、入学への不安もやわらぎます。

レビュー

「入学式って、こんなにドキドキするんだ!」と改めて思わせてくれる絵本です。さくらの花びらが主人公という発想がとてもユニークで、春の空気感や新生活の緊張感がしっかり伝わってきます。さくらちゃんの視点で描かれていることで、読者はひろちゃんの気持ちに自然と寄り添えるし、教室のシーンや先生の様子など、入学式の一日を丁寧に描いてくれているのが嬉しい。これから入学を迎える子どもへの読み聞かせにぴったりの、応援絵本です。