『おこりんぼママ』は、ドイツの絵本作家ユッタ・バウアー(Jutta Bauer)による作品で、原題は『Schreimutter』です。本書は2000年にドイツで出版され、日本語版は同年11月に小学館から刊行されました。
物語は、ペンギンの子どもが母親に激しく怒鳴られたショックで体がバラバラになってしまうという衝撃的な展開から始まります。頭は宇宙へ、胴体は海へ、翼はジャングルへと飛び散り、足だけが残った子ペンギンは、自分の体を探し求めて旅を続けます。最終的に、母親が全ての体の部位を集めて縫い合わせ、元の姿に戻してくれることで、親子の絆と愛情の深さが描かれています。
この作品は、親子の関係や感情の表現をユーモラスかつ深く描写しており、ドイツ児童図書賞大賞を受賞しています。また、ユッタ・バウアーは2010年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞しており、その作風は世界的に高く評価されています。
略歴
ユッタ・バウアー
ユッタ・バウアー(Jutta Bauer)さんは、1955年、当時の西ドイツ・ハンブルクに生まれた児童文学作家であり、イラストレーターです。専門学校で学んだ後、雑誌や児童書のイラストレーターとして活動を開始し、ドイツで最も知られるイラストレーターの一人となりました。彼女の作品は、シンプルでユーモラスなイラストと深いテーマを組み合わせ、子どもだけでなく大人の心も捉えます。
2001年には、自身が文と絵を手がけた『おこりんぼママ』(原題:Schreimutter)でドイツ児童図書賞絵本部門を受賞し、2010年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。主な作品として、『色の女王』(原題:Die Königin der Farben)、『いつもだれかが…』(原題:Opas Engel)、『羊のセルマ』(原題:Selma)などがあり、これらの作品は日本語にも翻訳されています。
小森香折(訳)
小森香折(こもり かおり)さんは、1958年東京都生まれの日本の小説家、翻訳家です。青山学院大学文学部を卒業後、学習院大学大学院文学研究科独文学専攻博士後期課程を満期退学されました。ドイツ語の絵本翻訳や児童小説の執筆で知られ、別名義として橋本香折も使用されています。
1997年、『ぼくにぴったりの仕事』で第12回毎日新聞小さな童話大賞を受賞。2002年にはファンタジー小説『ニコルの塔』で第5回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞し、翌年には第22回新美南吉児童文学賞も受賞しています。その他の著作に『さくら、ひかる。』『うしろの正面』『時知らずの庭』などがあり、翻訳作品としてはユッタ・バウアーの『おこりんぼママ』『色の女王』やリスベート・ツヴェルガーの『ロミオとジュリエット』など、多くのドイツ語絵本を日本語に紹介しています。
小森氏はドイツ語教師としての経験を活かし、翻訳と創作の両面で活躍されています。その作品は、子どもから大人まで幅広い読者層に親しまれています。
おすすめ対象年齢
ユッタ・バウアーの絵本『おこりんぼママ』の対象年齢は、一般的に4歳から小学校低学年(6〜8歳)くらいが推奨されています。親子関係や感情の表現について描かれているため、少し大きなお子さんが理解しやすい内容となっています。
レビュー
ユッタ・バウアーの『おこりんぼママ』は、感情や親子の絆について独自の視点で描いた、印象的な絵本です。物語の始まりで、怒りが爆発してしまう母親の姿と、それに対する子どもの心の反応が非常に率直に表現されており、感情が身体的に飛び散ってしまうという斬新な描写には驚きがあります。しかし、そこに込められた親の後悔や愛情が、最終的に子どもを包み込むように描かれているため、親子の深い絆と愛情が胸に響きます。
この絵本は、子どもにとっても親にとっても「怒り」という感情とどう向き合うかを考えさせるきっかけを与え、親が子どもに「ごめんね」と素直に伝えることの大切さを感じさせます。また、バウアーのシンプルで温かみのあるイラストが、感情の複雑さを優しく包み込むようで、読み終えた後にほっとするような作品だと思います。