筒井頼子さん作、林明子さんが絵を担当した『いもうとのにゅういん』は、1987年に発行された心温まる絵本です。幼稚園から帰宅したあさえは、妹のあやちゃんが盲腸で入院することを知り、初めての一人留守番を経験します。不安な夜を過ごしながらも、翌日のお見舞いに大切な人形「ほっぺこちゃん」を持参し、妹への深い愛情と成長を示します。林明子の繊細なイラストは、子どもたちの感情や日常の風景を鮮やかに描き出し、物語に温かみを加えています。家族の絆や思いやりの大切さを伝えるこの作品は、親子で共有したい一冊です。
略歴
筒井頼子
筒井頼子(つついよりこ)さんは1945年東京都板橋区生まれの絵本作家です。秋田県での幼少期や埼玉県での学生生活を経て、コピーライターとして働いた後、専業主婦となり子育てをしながら執筆を開始しました。1976年に福音館書店「こどものとも」で発表した『はじめてのおつかい』は、林明子さんが絵を担当し、子どもの成長を描く作品として長く愛されています。その後も『あさえとちいさいいもうと』や『いもうとのにゅういん』などで成功を収め、特に『いもうとのにゅういん』の英語版(Naomi’s special gift)がエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞しました。日常を温かく描く作風で、国内外で多くの読者に親しまれています。
林 明子(絵)
林 明子(はやし あきこ)さんは、日本の絵本作家・イラストレーターとして多くの人々に親しまれています。1945年、東京都に生まれ、大学でグラフィックデザインを学びました。卒業後はデザイン事務所で働き、そこでの経験を生かしつつ、1970年代から絵本のイラストを手がけるようになります。
林さんの作品は、子どもたちの日常の生活や心の成長を細やかに描写することに定評があり、特に「こんとあき」「おつきさまこんばんは」「クリスマスの三つのおくりものセット」などは、親子で楽しめる定番の作品として愛されています。また、彼女の絵本は、物語の温かさと優しい色合いのイラストが調和しており、読む人に安心感と親しみを与える魅力があります。
そのキャリアを通じて、林さんは数多くの賞を受賞し、日本の絵本界で非常に重要な存在となっています。彼女の作品は国内外で高く評価され、翻訳もされているため、世界中の子どもたちにも親しまれています。
おすすめ対象年齢
『いもうとのにゅういん』は、3歳から小学校低学年までの子どもに適しています。特に兄弟姉妹がいる家庭では、家族の絆や思いやりを学ぶ良い機会となるでしょう。物語の長さや内容は、幼児から小学生まで幅広い年齢層が楽しめるよう工夫されています。また、親子で一緒に読むことで、家族の大切さや互いを思いやる心を育むきっかけとなります。
レビュー
『いもうとのにゅういん』は、子どもの繊細な心情と家族の温かさを見事に描いた作品です。妹の入院という非日常的な出来事を通じて、あさえの成長や家族の絆が丁寧に描かれています。特に、あさえが大切な人形「ほっぺこちゃん」を妹に贈る場面は、幼いながらも深い愛情と優しさを感じさせ、心を打たれます。林明子さんの柔らかく温かみのあるイラストは、物語の雰囲気を一層引き立て、読者を物語の世界に引き込みます。家族の大切さや思いやりの心を再認識させてくれるこの絵本は、親子で共有し、共感し合える素晴らしい作品だと感じました。