どろんこ こぶた/アーノルド・ローベル

『どろんここぶた』(原題:Small Pig)は、アーノルド・ローベルが1969年にアメリカで発表した、泥の大好きなこぶたが主人公の絵本。日本語版は岸田衿子さんの訳で1971年に刊行されました。物語は、どろんこが大好きなこぶたが大掃除でぴかぴかにされてしまったことで家出。しかし都会でも泥を探し冒険し、最後には家族のもとへ帰還。泥を通じて“大好き”を追求し、冒険・発見・帰る場所の温かさを描いた一冊で、幼児が自分の好きを大切にしていいんだと感じられる愛にあふれた作品です。絵付きのストーリーは親しみやすく、ほっこり笑えるエピソードも満載。子どもも大人も楽しめるロングセラーです!

略歴

アーノルド・ローベル

アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました

岸田衿子(訳)

岸田 衿子(きしだ えりこ、1929年 – 2011年)は東京生まれの詩人・児童文学作家・翻訳家。東京芸術大学油絵卒後、絵本や児童書を多数執筆・翻訳し、アニメ『赤毛のアン』や『フランダースの犬』などTV主題歌の作詞も手がけました 。1966年の『かばくん』(中谷千代子絵)でサンケイ児童出版文化賞受賞。1971年に訳した『どろんここぶた』をはじめ、『はろるどのふしぎなぼうけん』『ルシールはうま』などローベル作品の翻訳でも知られています。詩作にも優れ、生涯を通じて子どもたちと詩・物語をつないできた存在です。

おすすめ対象年齢

この絵本は3〜6歳くらいの幼児にぴったり!泥遊びや冒険のワクワク感がいっぱいのストーリーで、集中して読める年齢です。絵が大きく、ページごとに動きがあるので、文字が読めない子でもイラストで楽しめます。読み聞かせにも、自分読みのきっかけにもぴったり。

レビュー

泥好きなこぶたの“泥への愛”が描かれたこの絵本、最高にチャーミング!ぴかぴかに洗われて「汚くない…つまらない!」と家出する展開が予想外で、読んでいる大人も思わず笑ってしまいました。都会で泥を求めて冒険するシーンは、ちょっぴりヒヤヒヤしつつもユーモアたっぷりで、泥のない場所で困るこぶたの姿に共感します。最後には家族のいる場所へ戻り、また泥にどっぷり…というハッピーエンドが、本当に読後感を温かくしてくれます。岸田衿子さんの訳もナチュラルで、こぶたの感情を素直に感じられる表現が光ります。子どもの”好きなこと”に素直に突き進む姿を描いたこの作品は、自分を大切にしていいんだよ、というメッセージが静かに心に染みる名作です。