ちいさいおなべ/村田 エミコ

村田エミコさんの『ちいさいおなべ』(2022年 童心社)は、小さなお鍋が主人公の心あたたまるお話です。いつも台所のすみでほこりをかぶり、大きなお鍋をうらやましく思っていた「ちいさいおなべ」。ところがある日、女の子に見つけてもらい久しぶりに出番がやってきます。「なにをつくるのかな?」とワクワクする展開に、読んでいる子どもも自然と引き込まれます。村田さんの柔らかい版画のタッチが温もりを添え、身近な道具への愛情や小さな存在の大切さを伝えてくれる絵本です。

略歴

村田 エミコ

村田エミコさんは1969年、東京都生まれの木版画家・絵本作家です。1993年頃から木版画制作を始め、以来毎年または数回の個展を開催し、絵本原画やオリジナル版画などを発表し続けています。絵本作品には『つぎ、とまります』(福音館書店)、『そばやのまねきねこ』(岩崎書店)、『おふろおばけ』(大日本図書)、『よるのとこやさん』(フレーベル館)など多数があります。その画風は温かみのある柔らかな色彩と版画らしい版の重なりが特徴で、子どもの想像力を刺激する、親しみやすくも懐かしい世界を描き出しています。

おすすめ対象年齢

『ちいさいおなべ』は、童心社の紹介によると幼児から小学校低学年向けにおすすめの絵本です。シンプルでわかりやすいストーリーなので、3歳頃から楽しめます。また、自分の役割や存在価値について考えるきっかけにもなる内容のため、小学校低学年が音読や読み聞かせで味わうのにもぴったりです。

レビュー

この絵本を読んで、「小さくても大切な役割があるんだな」と感じました。ちいさいおなべの気持ちに寄り添いながら読むと、子どもたちにも「自分も誰かの役に立っている」と思えるようになるのではないでしょうか。村田エミコさんの版画の絵は、どこか懐かしく温かみがあり、鍋や台所が生き生きと描かれていて素敵です。読み終わると、身近な道具に「ありがとう」と声をかけたくなるような気持ちになりました。親子で読むと、暮らしの中の小さなものに目を向けるきっかけになると思います。