たくさんのドア/アリスン・マギー

『たくさんのドア』は、アリスン・マギー作、ユ・テウン絵、なかがわちひろ訳による絵本で、2010年に主婦の友社から初版が刊行されました。原作である『So Many Days』は、アメリカで2003年に刊行されました。本書は、子どもたちが人生で直面する多くの「ドア」を象徴的に描き、その先に待つ未知の世界や経験を詩的に表現しています。親や教師から子どもたちへのエールとして、成長や人生の節目に贈りたい一冊です。

略歴

アリスン・マギー

アリスン・マギー(Alison McGhee)は、アメリカ出身の著名な児童文学作家で、小説や絵本、詩集など幅広いジャンルで活躍しています。彼女の作品は、詩的で深い感情に満ちた文体が特徴で、読者に強い印象を残します。代表作である『ちいさなあなたへ』(原作:Someday)は、親から子への深い愛情を美しい言葉で描き、多くの国で翻訳されるなど国際的な評価を受けました。この作品を含め、彼女の多くの著作が、全米図書賞候補やプーラッツァー賞候補に挙げられています。さらに、彼女の作品は、子どもたちだけでなく大人にも深い感動を与えることから、幅広い年齢層に親しまれています。加えて、マギーは大学でクリエイティブライティングを教える教授としても活動し、作家志望の学生たちにインスピレーションを与えています。また、創作以外にも、執筆ワークショップや講演活動を通じて、文学を愛するコミュニティの発展にも寄与しています。彼女の作品は、その普遍的なテーマと親しみやすいスタイルで、多くの読者に愛され続けています。

ユ・テウン

ユ・テウン(Yoo Tae-eun)は、韓国出身の絵本作家・イラストレーターで、ソウルで美術を学んだ後、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツでイラストレーションを専攻しました。代表作には『たくさんのドア』(アリスン・マギー作)や『きんぎょ』(The Little Red Fish)があり、繊細で感情豊かな描写が特徴です。現在はニューヨークを拠点に活動し、絵本制作のほか教育やワークショップも手掛けています。柔らかな色彩と細やかな筆致が彼のイラストの特徴で、国際的な評価を受け、多くの作品が翻訳・出版されています。彼の作品は、子どもから大人まで幅広い層に愛されており、国際的な絵本賞の候補にも度々挙げられています。また、アメリカや日本など海外でも翻訳・出版されており、国境を越えて多くの人々に感動を与えています。彼の今後の活動にも大いに期待が寄せられています。

なかがわちひろ

なかがわちひろ(中川千尋)は、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や『おたすけこびと』シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。

おすすめ対象年齢

『たくさんのドア』は、4歳から大人まで幅広い年齢層におすすめの絵本です。特に、卒業や入学など人生の節目を迎える子どもたちや、その親御さんにとって、心に響くメッセージが込められています。シンプルで深い内容は、小さな子どもから大人まで、それぞれの立場で共感し、考えさせられることでしょう。

レビュー

『たくさんのドア』は、人生の旅路における未知の経験や挑戦を「ドア」というメタファーで表現し、読む者に深い感動を与えます。アリスン・マギーの詩的な文章と、ユ・テウンの柔らかなイラストが融合し、未来への期待と不安、そして成長への励ましを巧みに描いています。なかがわちひろの丁寧な翻訳も、作品の魅力を引き立てています。特に、卒業や入学など新たな一歩を踏み出す時期に読むと、心に深く響くことでしょう。親から子への愛情やエールが詰まったこの絵本は、家族で共有する宝物となるに違いありません。

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