おひさまのたまご/エルサ・ベスコフ

エルサ・ベスコフ作・絵、石井登志子訳の『おひさまのたまご』(原題:Solägget)は、1932年にスウェーデンで初版発行、日本語版は2001年に徳間書店から出版されました。森の妖精が、地面に落ちていたまるくてだいだい色のものを「おひさまのたまご」だと信じこみ、仲間たちと大騒ぎ! ところが、そこにいやしんぼのカラスがやってきて…。自然と想像がまざりあったファンタジーで、春を待ちわびる気持ちや、ワクワクする冒険心が描かれています。北欧のやさしい風景と、ベスコフらしい繊細な絵が魅力的な名作です。

略歴

エルサ・ベスコフ

エルサ・ベスコフ(Elsa Beskow, 1874–1953)は、スウェーデン生まれの絵本作家・画家です。ストックホルム出身で、美術学校で学んだ後、雑誌の挿絵を描きながら創作活動を始めました。1897年に発表した『ちいさな ちいさな おばあちゃん』で絵本作家としてデビュー。その後も『おひさまのたまご』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』など、自然と子どもたちをテーマにした作品を多く生み出しました。彼女の作品は、温かなストーリーと繊細で優しい水彩画が魅力で、今も世界中で読み継がれています。

石井 登志子(訳)

石井登志子(いしい としこ)さんは、日本の児童文学翻訳家。東京女子大学卒業後、長年にわたりスウェーデン児童文学の翻訳を手がけており、特にエルサ・ベスコフやアストリッド・リンドグレーン作品の日本語訳で知られています。絵本や児童小説のほか、スウェーデン文化や暮らしに関する紹介文も執筆。温かくリズム感のある翻訳は、原作の雰囲気を壊すことなく日本の読者に伝わるよう工夫されています。ベスコフの世界観とも相性が良く、多くの読者に親しまれています。

おすすめ対象年齢

『おひさまのたまご』は、3歳くらいから小学校低学年向けの絵本です。ファンタジーの世界にワクワクし始める年頃の子どもたちにぴったり。自然や季節の変化に興味を持ち始めた子にもおすすめで、読み聞かせにも最適です。

レビュー

『おひさまのたまご』は、自然と空想がやさしく溶け合った、とても心温まる絵本でした。妖精が見つけた不思議な果物を「おひさまのたまご」と思い込むところがかわいらしく、子どもの豊かな想像力に寄り添った物語です。絵もとても丁寧で、春の訪れを感じさせる草花や森の動物たちが美しく描かれていて、ページをめくるたびに季節の息吹を感じます。自然を愛し、日々の小さな出来事を楽しむ心を育ててくれるような、何度も読み返したくなる絵本です。