りすのナトキンのおはなし/ビアトリクス・ポター

『りすのナトキンのおはなし』は、ビアトリクス・ポター作、いしいももこ訳の絵本で、原題は”The Tale of Squirrel Nutkin”です。1903年にイギリスで初めて出版され、日本語版は2019年に福音館書店からリニューアル出版されています。物語は、いたずら好きなリスのナトキンが、仲間とともにフクロウの老ブラウンさんの島へ木の実を集めに行く際の冒険を描いています。ナトキンの無鉄砲な行動とその結果が、教訓的かつユーモラスに描かれています。

略歴

ビアトリクス・ポター

ビアトリクス・ポター(Beatrix Potter,1866 – 1943)は、イギリスの絵本作家であり、自然科学者、環境保護活動家でもあります。裕福な家庭に生まれ、幼少期から自然や動植物に興味を持ちました。独学で絵を学び、観察力に優れた彼女は、細密な動植物のスケッチで注目されます。1902年、代表作『ピーターラビットのおはなし』を発表し、大ヒットとなりました。その後も動物を主人公とした絵本を次々と執筆し、児童文学の金字塔を築きました。また、晩年は湖水地方の環境保護に尽力し、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈しました。彼女の作品は、今も世界中で愛されています。

石井桃子(訳)

石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、小学低学年からとされています。物語の内容や文章の長さが、読み聞かせや自分で読むことに慣れてきた子どもたちに適しており、物語の理解と楽しさを十分に味わえる年齢層です。

レビュー

『りすのナトキンのおはなし』は、美しい自然の中で生きる動物たちの姿を繊細に描いた、ビアトリクス・ポターらしい魅力あふれる作品です。特にナトキンのいたずら好きな性格と、それが引き起こす結果が、ユーモラスでありながらもどこか考えさせられる点が印象的でした。大人の視点から見ると、ナトキンの行動には教訓が含まれており、「自由」と「礼儀」のバランスについて考えさせられます。いしいももこさんの翻訳は、やわらかくリズミカルで読みやすく、小さな子どもでも親しみやすい仕上がりになっています。ポターの描く繊細な水彩画とともに、物語の世界に引き込まれ、ナトキンの冒険にワクワクしながら読み進めました。

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