せかいいち大きな女の子のものがたり/アン・アイザックス

『せかいいち大きな女の子のものがたり』。原題は Swamp Angel。文はアメリカ人作家アン・アイザックス、絵はアメリカの名イラストレーター、ポール O. ゼリンスキー、訳は落合恵子さん。初版は1994年にアメリカで刊行され、コールデコット賞オナーなど多くの賞を獲得。その邦訳が 2024年に冨山房より刊行された日本語版で、訳者による丁寧な言葉づかいが魅力です。ストーリーは、テネシーで育った“世界一大きな女の子”アンジェリカが、大グマである「じごくのならずもの」を退治し、村を助けるという痛快な展開。ユーモアたっぷりでダイナミックな描写から、読後に元気と勇気が湧いてくる一冊です。

略歴

アン・アイザックス

アン・アイザックス(Anne Isaacs、1949年生まれ)はアメリカ、ニューヨーク州バッファロー出身の児童文学作家です。ミシガン大学で英文学と環境教育、さらに理学修士号を取得後、環境教育分野で働きつつ執筆活動を開始しました。代表作に 『せかいいち大きな女の子のものがたり』は、ゼリンスキーによる鮮やかな挿絵とともに、テネシー伝説として語り継がれる“タールテール”(大風伝説)風の構成がユニークで、コールデコット・オナーや他多数受賞歴があります。子ども向けだけでなく大人にも楽しめる、フォークロアとユーモアを融合させた作風が魅力です。

ポール O. ゼリンスキー(絵)

ポール O. ゼリンスキー(Paul O. Zelinsky、1953年生まれ)はアメリカの児童書のイラストレーター兼作家。イェール大学やフィラデルフィアのタイラー芸術学校で学び、モーリス・センダックの授業に影響を受けて絵本の世界に進出しました。代表作に『ラプンツェル』の絵本で1998年にコールデコット賞を受賞し、『せかいいち大きな女の子のものがたり』では1995年にオナー賞を受賞。そのほか『The Wheels On the Bus』など、動きのある仕掛け絵本でも人気です。彼の絵は、油絵風のテクスチャーとユーモラスかつ力強い表現で知られ、物語と絶妙に調和しています。

落合 恵子(訳)

落合 恵子さんは、日本の著名なエッセイスト・司会者・翻訳家で、子どもの本の翻訳も数多く手がけています。テレビ番組の司会を長年務める一方、児童文学の紹介や朗読活動を通じて、多くの親子に読書の魅力を届けてきました。『悲しみのゴリラ』の訳も、繊細な感情に寄り添いながら、自然で丁寧な日本語へと紡ぎ出しています。やさしく、子どもの目線に立った訳語選びが読む者の心に響きます。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象は 4歳〜7歳以上 の児童向けとされており、小学校低学年から楽しめます。ストーリーの語彙や展開はやや高度で、フォークロア風の構成やユーモアを理解できる年齢向き。読み聞かせだけでなく、自分で読める子どもにもぴったりです。強くてたくましいヒロインの活躍を見て、勇気や元気をもらえる一冊です。

レビュー

まず、アンジェリカが大きくて勇ましくて、ほんとに「すごい存在感」!村を襲っていた大ぐまを倒すシーンは圧巻で、まるで映画のワンシーンを絵本で見てるみたい。ユーモアたっぷりで、読んでいて思わず吹き出しそうになるし、それでいて、女の子の強さや知恵に胸が熱くなる。ゼリンスキーの絵は木目のような質感が温かくて、それがアンジェリカの強さとドラマ性をより引き立てます。落合恵子さんの日本語訳もリズムがよくて、漢字の並びや語感が耳に心地よい。読み終わったあとには、「よーし、私も頑張ろう!」と思える元気が湧いてくる。子どもも大人も、読んだら自然と背筋が伸びるような、ちょっと特別な一冊!