
『ロバのシルベスターとまほうの小石』は、ウィリアム・スタイグ作、せたていじ訳の絵本です。原作名は『Sylvester and the Magic Pebble』で、1969年にアメリカで発行されました。日本語版は1975年に評論社から出版されています。現在簡単に入手できるのは2006年発行の新版です。物語は、ロバのシルベスターが願いを叶える魔法の小石を見つけるものの、思わぬ出来事から自らが岩に変わってしまい、家族との再会を願う姿を描いています。家族愛や希望の大切さを伝える感動的なストーリーです。
略歴
ウィリアム・スタイグ
ウィリアム・スタイグ(William Steig,1907年 – 2003年)は、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれの漫画家、イラストレーター、彫刻家、児童文学作家です。芸術家一家に育ち、1930年からザ・ニューヨーカー誌などに漫画を掲載し、1600以上の作品を発表しました。1968年ごろ児童文学に転向し、『ロバのシルベスターとまほうのこいし』でコールデコット賞を受賞。他にも『アベルの島』や『歯いしゃのチュー先生』など、多くの名作を生み出しました。また、映画『シュレック』の原作『みにくいシュレック』の作者としても知られています。
せた ていじ(訳)
せたていじ(瀬田貞二、1916年 – 1979年)は、東京市本郷区(現:東京都文京区)湯島に生まれました。東京帝国大学文学部国文科を卒業後、平凡社に入社し、『児童百科事典』全24巻の企画編集に携わり、1956年完成。その後、児童文学の翻訳や評論、創作に専念し、J・R・R・トールキンの『指輪物語』やC・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』など、多くの名作を日本に紹介しました。その他、日本の民話の再話もあり、『かさじぞう』『ふるやのもり』などはロングセラーで多くの人々に愛され続けています。また、自宅に「瀬田文庫」を開き、地域の子どもたちに読書の場を提供するなど、亡くなる直前まで児童文学の普及に尽力しました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、一般的に4歳から8歳とされています。物語の内容や絵の表現が、幼児から小学校低学年の子どもたちに適しており、読み聞かせや自分で読むことを通じて、家族愛や希望の大切さを学ぶことができます。ただし、子どもの理解力や興味に応じて、年齢の範囲は前後する場合があります。
レビュー
本作は、シンプルながら深いテーマを持つ物語であり、子どもだけでなく大人にも響く内容です。シルベスターの冒険と試練を通じて、家族の絆や希望の力を再認識させられます。スタイグの温かみのあるイラストレーションと、せたていじの流れるような翻訳が相まって、読者を物語の世界に引き込みます。読み終えた後、心に温かさと感動が残る一冊です。