まるごとごくり!/シンシア・ジェイムソ

『まるごとごくり!』は、再話:シンシア・ジェイムソン(Cynthia Jameson)、絵:アーノルド・ローベル、訳:小宮由 さんによる絵本です。原題は『The Clay Pot Boy』で、1975年にアメリカで出版されました。日本語版は2016年に大日本図書から刊行されています。子どもがいなくてさびしいおじいさんとおばあさんが土で小さな男の子をつくり焼き上げると、その土偶が突然立ち上がって「はらへった!」と動き出します。村中の牛乳やパンを「ごくり」と飲み込み、おじいさんやおばあさんまでも!?ユーモラスでちょっとスリリングな展開と、ローベルのあたたかみある絵が合わさって、読み聞かせにもぴったりな昔話再話絵本です。

略歴

シンシア・ジェイムソン

シンシア・ジェイムソン(Cynthia Jameson)は、アメリカの児童文学作家で、特に昔話の再話を得意としました。1970年代から1980年代にかけて活動し、ロシアの民話をもとにした絵本をいくつも執筆しています。代表作には、『The Clay Pot Boy』(1975年、絵:アーノルド・ローベル)、『Winter Hut』(1973年)、『The Flying Shoes』(1973年)などがあり、いずれもユーモアとリズム感のある語り口で人気を集めました。彼女の作品は「読み聞かせても、一人読みでも楽しい」ことを大切にしており、民話に現代的な息吹を吹き込む作家として知られています。

アーノルド・ローベル(絵)

アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました。

小宮 由(訳)

小宮由(こみやゆう,1974年生まれ)さんは東京都出身の翻訳家。学生時代を熊本で過ごし、大学卒業後、児童書出版社に入社。2001年に留学し、帰国後はいくつかの出版社勤務を経て、翻訳家として活動を開始しました。2004年から東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰しています。家族も児童書に関わる仕事をしており、祖父はトルストイ文学の翻訳家・北御門二郎です。

おすすめ対象年齢

対象年齢は「小学校低学年〜中学年」とされています。おじいさんおばあさんと土偶のコミカルなやり取り、リズミカルな繰り返し表現が多く、読み聞かせでも盛り上がりますし、一人読みでもページを自然にめくれるテンポの良さがあります。ちょっとシュールなユーモアもあるので、好奇心旺盛な子どもたちにぴったりです。

レビュー

この絵本、読んでて何度もクスッとしました。土から生まれた男の子が「はらへった!」としゃべりながら、次々に村中の牛乳やパンを飲み込んでしまう様が、想像以上にダイナミックでおかしくてインパクト大!アーノルド・ローベルの絵はシュールなのにどこか愛嬌があって、恐いようで可愛らしさも感じさせるタッチが絶妙。翻訳の小宮由さんのリズム感ある日本語も体にすっと入ってくる感じで、声に出して読みたくなります。子どもと一緒に読んだら「また読んで!」ってリクエストが止まらない予感。昔話の深みと絵本の遊び心が合わさった、新しい楽しさがある絵本だと思いました。