『いたずらこねこ』は、バーナディン・クック作、レミイ・シャーリップ絵、まさきるりこ訳による楽しい絵本です。初版原題は The Curious Little Kitten、アメリカで1956年に刊行され、日本語版は1964年に福音館書店から出版されました。好奇心いっぱいの子ねこが、初めて出会ったカメに夢中になります。ぽんとたたくと頭や足がひっこむ不思議に大慌てしながらも、観察と発見を繰り返していく様子がユーモラスに描かれています。子どもの小さな冒険心や驚きがたっぷりつまった一冊で、読み聞かせにもぴったり。シンプルな展開ながら繰り返しのリズムが心地よく、幼児をぐっと惹きつける魅力を持っています。
略歴
バーナディン・クック
バーナディン・クック(Bernadine Cook, 1910–1998)は、アメリカ出身の児童文学作家です。ユーモラスで温かみのある作品を手がけ、日常の小さな発見や子どもの好奇心を題材にした絵本で知られています。代表作『いたずらこねこ(The Curious Little Kitten)』は1956年に出版され、レミー・シャーリップのイラストとともに、幼児の心をつかむ作品として長く読み継がれています。そのほか、子どもと動物の関わりをテーマにした作品も多く、やさしい言葉とユーモラスな視点で描かれる世界は親しみやすいと評価されています。シンプルながら生き生きとした表現力が魅力で、アメリカ児童文学における個性的な作家のひとりです。
レミー・シャーリップ
レミー・シャーリップ(Remy Charlip, 1929–2012)は、アメリカ・ニューヨーク生まれの絵本作家・イラストレーターです。ユーモアと独創的な発想で知られ、代表作『Fortunately』(邦題『よかったねネッドくん』)は、幸運と不運が交互に繰り返されるスリリングでコミカルな展開が人気を集めました。また『Arm in Arm』や『Mother Mother I Feel Sick』など約40冊以上の絵本を手がけ、斬新な構成や大胆なレイアウトで子どもから大人まで楽しませました。彼の作品はニューヨーク・タイムズ「年間優秀絵本」に何度も選ばれ、アメリカ絵本界にユーモアと視覚的遊びを持ち込んだ作家として高く評価されています。
まさき るりこ(訳)
まさきるりこ(真崎るり子、1934–2015)は日本の児童文学翻訳家です。英米の絵本や児童文学の翻訳を数多く手がけ、とくにエリック・カールやレミイ・シャーリップら海外作家の作品を日本に紹介する架け橋となりました。1964年に『いたずらこねこ』(福音館書店)の翻訳を担当し、その後もリズム感ある日本語と読みやすさで親子に親しまれています。翻訳では、原文の楽しさやリズムを大切にしつつ、日本の子どもたちに自然に響く表現に工夫を凝らしました。児童文学翻訳の発展期に活躍した一人であり、海外の名作絵本を広く日本に根付かせた功績は大きいと評価されています。
おすすめ対象年齢
『いたずらこねこ』は、2歳ごろからの幼児におすすめの絵本です。繰り返しのリズムやシンプルな展開が小さな子にも分かりやすく、初めての絵本体験にもぴったり。好奇心いっぱいの子ねこの行動が子どもの日常に重なりやすく、共感と驚きを味わえます。読み聞かせでは、親子で笑い合いながら楽しめるため、就学前の子どもにも長く愛読できる一冊です。
レビュー
『いたずらこねこ』は、読んでいるだけで自然と笑顔になれる絵本でした。子ねこの無邪気な好奇心や大げさなリアクションは、まるで子どもそのもので、身近な発見に夢中になる姿がほほえましいです。カメの動きに驚いたり、試してみたりする繰り返しがテンポよく描かれていて、子どもが「つぎはどうなるの?」とワクワクしながらページをめくれるのも魅力。シンプルながらユーモアと驚きにあふれ、読み聞かせする大人も楽しくなります。幼児期の「やってみたい!」「なんで?」という気持ちを大切にしてくれる、長く親しまれる良質な一冊だと思いました。