『とこやにいったライオン』(作:サトシン/絵:おくはらゆめ、2010年 教育画劇)は、とにかく笑える“頭髪トラブル”絵本。もっさもさに伸びたたてがみを抱えたライオンが、とこやさんに行ってみたら…なんと「へ、へ、へ、へーっくしょおーい!」のくしゃみ一発でたてがみがバッサリ! そのあっけなさにビックリ、でもその後の展開にまたビックリ。サトシンさんならではのハチャメチャな発想と、おくはらゆめさんのとぼけたタッチの絵が見事にマッチして、読み聞かせでもウケ狙いでも、大ウケ間違いなしの一冊です。教育画劇の紹介でも「奇想天外爆笑絵本」と銘打たれていて、まさにその通り。
略歴
サトシン
サトシン(本名:佐藤伸/さとう しん)さんは1962年、新潟県生まれの絵本作家です。もともとは広告制作プロダクションに勤め、専業主夫を経て、フリーランスのコピーライターとして在宅で働きつつ、やがて絵本作家の道へ進みました。「お話の力の復権」を目指し、親子のコミュニケーション遊びとして「おてて絵本」を考案、ソング絵本の普及活動も精力的に行っています。代表作には、爆笑必至で子どもにも大人にも人気の『うんこ!』(絵:西村敏雄/文溪堂)、『わたしは あかねこ』(絵:西村敏雄/文溪堂)、そして『とこやにいったライオン』(絵:おくはらゆめ/教育画劇)や『でんせつの きょだいあんまんを はこべ』(絵:よしながこうたく/講談社)など、多彩なテーマとユーモアを交えた絵本を多数手がけています。「おてて絵本」のアイデアや全国での絵本ライブ活動など、絵本を読むだけでなく“場づくり”としての絵本文化を広げている点も、サトシンさんならではの魅力だと思います。
おくはら ゆめ(絵)
おくはらゆめさんは1977年兵庫県生まれ、辻学園日本調理師専門学校卒。もともと料理の仕事をしていましたが、友人の子どもへの手作り絵本をきっかけに絵本作家を志すようになりました。デビュー作は『ワニばあちゃん』(理論社)、新人賞を受賞。代表作には『くさをはむ』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞、さらに『シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる』(童心社)では日本絵本賞を得ています。おくはらさんの絵本の魅力は、ほんわかユーモアとちょっとシュールな視点。日常や動物のちょっとした“違和感”を、ポップであたたかい絵と物語でゆるやかに膨らませていく作風が親しまれています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、幼児~小学校低学年くらい(だいたい3〜7歳)がメインの対象です。大胆なギャグ展開や「くしゃみでバッサリ!」というびっくりシーンが多く、小さな子どもたちが思わず声を出して笑える内容。絵も思い切りユーモラスで読みやすく、読み聞かせの場面でも盛り上がること間違いなしです。
レビュー
最初に「もっさもさのライオンが美容室へ」という設定だけで、「これは絶対おもしろい!」と思いましたが、読んでみてその期待を大いに超えてきました。くしゃみ一発でたてがみがバサッと落ちる瞬間の“あっけなさ”がまず素晴らしく、そこからのライオンの反応や、とこやさんのアシストなど、細かい“ずっこけ感”が重なっていく展開がたまりません。おくはらゆめさんの絵がほんとにいい味を出していて、ライオンのもしゃもしゃ頭から、バサッと落ちた後のツルツル頭、そしてその後どうなるか…という流れが、見るだけで笑えてしまいます。サトシンさんの“大胆だけど子どもがワクワクできる発想”と、おくはらさんの“ゆるくてあたたかい絵のテンション”がそろって、読み聞かせている大人もつい笑顔になってしまう一冊。子どもと一緒に“とこやさん行ってもいい?”なんて話になりそうな、夢のあるおふざけ絵本です。


