ちいさなもみのき/マーガレット・ワイズ・ブラウン

『ちいさなもみのき』は、マーガレット・ワイズ・ブラウン作、バーバラ・クーニー絵、上條由美子訳による絵本です。原作名は『The Little Fir Tree』で、1954年にアメリカで発行されました。日本語版は1993年に福音館書店から出版されています。物語は、森のはずれに立つ小さなもみの木が、ある日、男の人によって掘り出され、病気で歩けない男の子の家に運ばれます。もみの木と男の子は一緒にクリスマスを過ごし、春になるともみの木は再び森に戻されます。この心温まる交流が毎年繰り返されますが、ある冬、男の人がもみの木を迎えに来なくなり、もみの木は男の子を心配します。その後、もみの木は驚くべき出来事に出会います。この絵本は、美しい文章と挿絵で、静かに力強く語られるクリスマスの物語です。

略歴

マーガレット・ワイズ・ブラウン

マーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown, 1910-1952)は、アメリカを代表する児童文学作家で、多くの子どもたちに愛される絵本を生み出しました。特に『おやすみなさい おつきさま』(Goodnight Moon)は、彼女の代表作として知られています。ニューヨーク生まれのブラウンは、幼少期から動物や自然への関心を持ち、のちにホリンズ大学で教育を学びました。後、教師として働きながら執筆活動を開始。彼女の作品は、シンプルでリズミカルな言葉遣いと、子どもの感性を捉えた内容が特徴です。若くして急逝しましたが、その作品は今もなお、多くの読者に親しまれています。

バーバラ・クーニー(絵)

バーバラ・クーニー(Barbara Cooney)は、1917年にニューヨーク市で生まれました。画家であった母親の影響で、幼少期から絵を描くことに親しみ、スミス・カレッジおよびアート・スチューデンツ・リーグ校で美術を学びました。彼女は、物語とテーマに忠実な作風で、多くの挿絵や絵本を手がけ、アメリカで高く評価される絵本作家の一人となりました。代表作には、『チャンティクリヤときつね』や『にぐるまひいて』があり、これらの作品で2度コールデコット賞を受賞しています。

上條 由美子(訳)

上條由美子(かみじょうゆみこ)氏は、日本の翻訳家であり、主に英語圏の絵本や児童文学の翻訳を手がけています。彼女は、海外の名作絵本を日本の読者に紹介する役割を果たしており、『ちいさなもみのき』の翻訳もその一つです。上條氏の翻訳は、原作の魅力を損なうことなく、日本語として自然で美しい表現が特徴です。具体的な生年月日や経歴の詳細は公表されていませんが、彼女の翻訳作品は多くの読者に親しまれています。

おすすめ対象年齢

『ちいさなもみのき』は、3~4歳からの子どもたちにおすすめの絵本です。物語の内容や絵の美しさが、この年齢層の子どもたちの感性に響く作品となっています。

レビュー

『ちいさなもみのき』は、孤独なもみの木と病気の男の子の心温まる交流を描いた作品で、読者の心に深く響きます。マーガレット・ワイズ・ブラウンの繊細で優しい文章と、バーバラ・クーニーの美しい挿絵が見事に融合し、物語の世界観を豊かに表現しています。特に、もみの木が男の子を心配する場面では、自然と感情移入してしまいます。また、季節の移ろいとともに繰り返される二人の交流が、時間の流れや命の尊さを静かに伝えてくれます。クリスマスの季節に限らず、親子で読みたい一冊です。