『ちいさいおうち』(原題:The Little House)は、アメリカの作家バージニア・リー・バートンが1942年に刊行した名作絵本。日本語版は石井桃子さんの翻訳で1965年に岩波書店から出版されました。主人公は、のどかな田舎に建てられた“ちいさいおうち”。やがて周りに道路ができ、ビルが建ち、都会のど真ん中に取り残されてしまいます。でも、ある日…!時代の変化とともに風景がどんどん変わっていくなかで、変わらない大切なものって何?と問いかけてくれる絵本です。絵も細かくて、ページごとにじっくり楽しめます。
略歴
バージニア・リー・バートン
バージニア・リー・バートン(Virginia Lee Burton, 1909–1968)は、アメリカ・マサチューセッツ州生まれの絵本作家・イラストレーター。絵本『ちいさいおうち』で知られ、1943年に同作でコールデコット賞を受賞。幼少期をカリフォルニアで過ごし、後にボストン美術館付属美術学校に進学。ダンサーやデザイナーとしても活動しながら、絵本作家としての才能を開花させました。夫は彫刻家のジョージ・デミトリオスで、彼との生活を通じて自然や生活へのまなざしが作品にも反映されています。ほかに『せいめいのれきし』『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』など、時代を超えて読み継がれる作品を多数残しました。
石井桃子(訳)
石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
おすすめ対象年齢
『ちいさいおうち』は、4歳〜小学校低学年くらいの子におすすめの絵本です。おうちが主人公というユニークな視点で、自然や街の移り変わりを感じられるので、小さな子にも親しみやすく、読み聞かせにもぴったり。細かく描き込まれたイラストをじっくり眺めながら、大人と一緒に話しながら読むのもおすすめです。環境や暮らしの変化について、自然と考えるきっかけになりますよ。
レビュー
最初は、田舎の丘の上で静かに暮らしていた“ちいさいおうち”が、少しずつ都会の喧騒に飲み込まれていく様子がちょっと切なくて、でもどこかリアル。窓から見える風景が変わっていく描写がとても丁寧で、「時間がたつってこういうことなんだな」と子どもも感じられると思います。最後にはまた田舎に戻ることができて、ほっとするラストも◎。おうちって、家族や安心感の象徴なんだなぁと改めて思わされました。世代を超えて読まれてきたのも納得の一冊!