ごちゃまぜカメレオン/エリック・カール

エリック・カール作『ごちゃまぜカメレオン』(原題 The Mixed-Up Chameleon)は、1975年アメリカで初版が刊行されたユーモラスな一冊です。2022年にやぎたよしこさんの新訳で偕成社から出版されました。ふだんは体の色を変えながら暮らしていたカメレオンが、動物園で出会った他の動物に憧れて「ぼくもあんなふうになりたい!」と願うと、体がどんどん変化していきます。ページをめくるごとに、キリンの首やゾウの鼻などが次々と加わり、不思議でおかしな姿に。けれど最後には「もとの自分がいちばん」と気づきます。鮮やかなコラージュとシンプルな展開が、自己肯定感を育む楽しい絵本です。

略歴

エリック・カール

エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。

やぎた よしこ(訳)

やぎたよしこ(八木田佳子)さんは翻訳家として、英語圏の絵本や児童文学を日本の子どもたちに紹介し続けています。児童文学の名作から現代の絵本まで幅広く手がけ、分かりやすくリズム感のある日本語訳で定評があります。特にエリック・カール作品では『ごちゃまぜカメレオン』(偕成社、2022年刊)を翻訳し、独特のコラージュ絵の世界を生き生きと伝えました。原作の持つユーモアやメッセージ性を大切にしながら、日本語の子どもたちが声に出して楽しめるよう工夫されているのが特徴です。翻訳を通じて海外の名作絵本を身近にしてくれる重要な役割を担っている人物です。

おすすめ対象年齢

対象年齢は3歳ごろから小学校低学年におすすめです。動物の姿がどんどん変わっていくユーモラスな展開は小さい子も夢中になりますし、「自分らしさ」に気づくラストは成長段階の子どもに響きます。色鮮やかな絵と繰り返しのパターンで、読み聞かせや一人読みどちらでも楽しめます。親子で「どんな動物に変わったかな?」と会話しながら読むのも楽しい一冊です。

レビュー

読んでいて、カメレオンの姿がどんどん変わっていくページに大笑いしました。「次はどうなるの?」と子どもと一緒にワクワクできる展開がとても魅力的です。キリンの首やゾウの鼻など、ちぐはぐに組み合わさった姿はおかしさだけでなく、他人と比べてしまう気持ちをやさしく描いていて共感できました。そして最後に「やっぱり自分がいい」と思える展開は、子どもにとって大切なメッセージ。エリック・カールらしい大胆で鮮やかな色づかいが、ストーリーの楽しさをさらに引き立てています。何度でも読み返したくなる、親子で味わいたい絵本です。