ひよこのアーサーがきえた!/ナサニエル・ベンチリー

『ひよこのアーサーがきえた!』は、作:ナサニエル・ベンチリー、絵:アーノルド・ローベル、訳:福本友美子さんによる絵本です。原題は英語で『The Strange Disappearance of Arthur Cluck』で、1967年にアメリカのHarper & Row社より初版発行されました。日本語版は2010年に文化出版局から出版されています。めんどりかあさんの息子アーサーが突然いなくなってしまい、大あわてで探すと、物知りのふくろうさんが登場。キツネやネズミを当たっていくうちに、意外な結末が待っている……ユーモアとちょっとしたドキドキが楽しい、教訓的でもある読みやすいミステリー絵本です。

略歴

ナサニエル・ベンチリー

ナサニエル・ゴダード・ベンチリー(Nathaniel Benchley,1915年–1981年)は、アメリカ・マサチューセッツ州ニュータウン生まれの作家で、父親は著名なユーモリスト、ロバート・ベンチリー。ハーバード大学卒業後、ニューヨークで新聞記者や編集者を経て、第二次世界大戦中は海軍に従軍しました。その後はフリーランスで小説・伝記・児童文学など幅広く執筆し、1960年代以降は子ども向け読み物でも活躍。代表作には、「I Can Read」シリーズの『Oscar Otter』(1966)や『Red Fox and His Canoe』(1964)、『Sam the Minuteman』(1969)、そして本作『The Strange Disappearance of Arthur Cluck』(1967)などがあり、いずれもアーノルド・ローベルとのコンビで親しまれました。大人も子どもも楽しめる、ちょっとユーモラスで心に残るストーリーが魅力の作家です。

アーノルド・ローベル(絵)

アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました。

福本 友美子(訳)

福本友美子(ふくもと ゆみこ、1951年東京都生まれ)さんは、慶應義塾大学文学部図書館・情報学科を卒業後、調布市立図書館で児童サービスに携わりました。1980年からフリーランスで児童書の翻訳や批評、編集に取り組み、英語圏を中心とした児童文学の翻訳に定評があります。代表作に『おすわりくまちゃん』や『おやすみくまちゃん』、『リディアのガーデニング』などがあります。また、国際子ども図書館の活動やケニアでの図書館設立プロジェクトにも貢献し、子どもの読書普及や翻訳を通じて幅広く活動を続けています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、おそらく幼児(4歳頃)から、小学校低学年くらいまででしょう。ミステリー絵本ということで、読み聞かせにもよく、小さなお子さんの「探す・見つける」冒険心をくすぐる内容です。優しく親しみやすい絵とストーリーで、絵本として楽しく読める一冊かと思います。

レビュー

正直に言うと、このお話、すごくかわいくてちょっとハラハラしました!めんどりかあさんの焦る気持ちに心が動かされて、ページをめくるたびに「アーサーはどこ?」と引き込まれます。アーノルド・ローベルの絵はほんわか優しくて、そこにベンチリーのユーモアが加わって、ミステリー?なのに親しみやすいんです。最後に明かされるアーサーの行方も納得で、読み終えた後はほっとしたような、微笑ましい気持ちになります。子どもたちに読み聞かせたら、「ふくろうさんつよい!」とか「アーサー大丈夫?」って自然に会話が弾みそう。ほんのりしたドキドキとあたたかさが共存する、良い意味でちょっとクセになる絵本です。