ビアトリクス・ポターの『ピーターラビットのおはなし』(The Tale of Peter Rabbit)は、1902年に発表され、世界中で愛される児童文学の名作です。主人公はやんちゃで好奇心旺盛なうさぎのピーター。彼はマクレガーさんの畑に忍び込み、美味しそうな野菜を夢中で食べるものの、見つかって逃げることに。お母さんに注意されていたにもかかわらず危険な冒険に出るピーターの姿が、子どもたちの共感を呼び、愛らしいイラストとともに緊張と解放のストーリーが魅力的です。
ビアトリクス・ポターの略歴
ビアトリクス・ポター(1866–1943)は、イギリスの絵本作家であり、自然科学者、環境保護活動家でもあります。裕福な家庭に生まれ、幼少期から自然や動植物に興味を持ちました。独学で絵を学び、観察力に優れた彼女は、細密な動植物のスケッチで注目されます。1902年、代表作『ピーターラビットのおはなし』を発表し、大ヒットとなりました。その後も動物を主人公とした絵本を次々と執筆し、児童文学の金字塔を築きました。また、晩年は湖水地方の環境保護に尽力し、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈しました。彼女の作品は、今も世界中で愛されています。
おすすめ対象年齢
この絵本は3歳から6歳の幼児を主な対象としていますが、物語の深みやイラストの魅力から、小学校低学年の子どもたちにも楽しまれています。
レビュー
ポターは動物や自然に対する愛情が深く、それが『ピーターラビットのおはなし』にも反映されています。ポター自身、この物語を楽しみながら創り上げたと言われており、特に幼い読者たちに対して「小さな生き物たちへの愛と敬意を育んでほしい」という願いを込めていました。彼女はピーターのようなキャラクターが、子どもたちにとって親しみやすいだけでなく、自然界の神秘や危うさも伝える存在になることを意識していたようです。
ポターはまた、ピーターのいたずらっぽい性格に自分自身の一面も反映していたと言います。彼女にとって、ピーターはただの物語の主人公ではなく、自分の一部であり、自然と動物たちを表現する愛すべき存在だったのです。
このおはなしは、好奇心旺盛なうさぎのピーターが繰り広げる冒険が描かれた、親しみやすくも少しスリルのある絵本です。ピーターが人間の菜園に忍び込み、追いかけられながらもなんとか逃げ出す物語は、子どもたちにとってドキドキワクワクが詰まった体験です。物語を通じて「いたずらは時に危険を招く」という教訓も感じられますが、ピーターの愛らしさと無邪気な行動には憎めない魅力があり、読後にほっとした気持ちになります。
ポターの繊細な画風は、自然と動物への深い愛情が感じられるもので、子どもから大人まで楽しむことができます。動物たちが住むイギリスの田園風景が美しく描かれ、あたかも自分もピーターと一緒に庭を駆け回っているかのような感覚になります。また、ピーターだけでなく、その家族や仲間たちも登場し、動物たちが小さな社会を形成している様子がとても愛おしいです。
表紙ですが日本では、翻訳絵本の表紙デザインが元のものと異なることがよくあります。これは、日本の出版業界において「独自の市場価値を加える」という慣例だそうです。どちらも好きな画風です。