
マーシャ・ブラウンの絵本『三びきのやぎのがらがらどん』(1859年)は、ノルウェーの昔話をもとにした人気の絵本です。日本では1965年に瀬田貞二さんの翻訳で出版され、以来、長年にわたり多くの子どもたちに親しまれています。3匹のやぎ「がらがらどん」が美味しい草を求めて橋を渡ろうとしますが、橋の下には恐ろしいトロルが待ち構えています。この絵本の魅力は、ブラウンの力強い線と印象的な色使いです。やぎたちの勇気やトロルの迫力が巧みに描かれ、リズミカルな展開が読み聞かせにもぴったりです。物語は「小さなものでも知恵を使えば勝てる」という教訓を含み、子どもたちに勇気と知恵の大切さを伝えます。世代を超えて愛される、家族で楽しめる名作絵本です。
略歴
マーシャ・ブラウン
マーシャ・ブラウン(Marcia Brown、1918年 – 2015年)は、アメリカ、ニューヨーク州ロチェスター生まれの著名な絵本作家であり、イラストレーターです。彼女は豊かな感性と独特の絵画スタイルで知られ、『三びきのやぎのがらがらどん』や『影ぼっこ』や『せかいいちおいしいスープ』など、多くの名作を生み出しました。マーシャ・ブラウンの作品は、文学性と芸術性の高さで評価され、カーネギーメダルや3度のコールデコット賞を受賞しています。特に、異なる文化や民話を題材にした作品が多く、読者に異文化理解を促しました。また、教育者としても活躍し、子どもたちへの読み聞かせを通じて、絵本の魅力を広めました。その生涯を通じて、彼女は絵本を通じて子どもたちの想像力を育むことに情熱を注ぎ、児童文学に多大な貢献をした作家であり、今もなお多くの人々に愛されています。
せた ていじ(翻訳)
せたていじ(瀬田貞二、1916年 – 1979年)は、東京市本郷区(現:東京都文京区)に生まれました。東京帝国大学文学部国文科を卒業後、平凡社に入社し、『児童百科事典』全24巻の企画編集に携わり、1956年完成。その後、児童文学の翻訳や評論、創作に専念し、J・R・R・トールキンの『指輪物語』やC・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』など、多くの名作を日本に紹介しました。その他、日本の民話の再話もあり、『かさじぞう』『ふるやのもり』などはロングセラーで多くの人々に愛され続けています。また、自宅に「瀬田文庫」を開き、地域の子どもたちに読書の場を提供するなど、亡くなる直前まで児童文学の普及に尽力しました。
おすすめ対象年齢
マーシャ・ブラウンによる絵本「三びきのやぎのがらがらどん」の対象年齢は、3歳ぐらいからと言われています。
この絵本では、小さな幼児は一番小さいやぎ、3歳くらいの子どもは真ん中のやぎの気持ちでと、三びきのそれぞれのやぎと自分を重ねることができるかも。
レビュー
マーシャ・ブラウンの『三びきのやぎのがらがらどん』は、何度読んでも面白い、シンプルで力強い物語だと感じます。この絵本の素晴らしいところは、緊張感とコミカルさが絶妙にバランスしている点です。やぎたちが「がた こと」「がた ごと」「がたん ごとん」と橋を鳴らして渡るたびに生まれるドキドキ感や、トロルが出てくる場面の迫力は、子どもたちがページをめくるごとに物語に引き込まれていくように描かれています。
また、マーシャ・ブラウンのイラストはとても力強く、視覚的なインパクトがあります。コントラストが特に印象的で、トロルの恐ろしさややぎたちの表情、そして物語の緊張感がよく伝わってきます。このシンプルで強い線は、幼い読者にも理解しやすく、物語に集中させる効果を持っていると思います。
さらに、この絵本は子どもたちが勇気と知恵について学ぶ良いきっかけにもなります。小さなやぎから順番に橋を渡り、最終的には一番大きなやぎがトロルをやっつける展開は、やぎたちがそれぞれの力をうまく使って困難を乗り越える姿が描かれています。この教訓はシンプルですが深く、何度も読み返すことで自然に身についていくものだと感じます。
全体的に『三びきのやぎのがらがらどん』は、子どもたちにとって楽しいだけでなく、勇気や知恵を考えるきっかけを与えてくれる絵本です。