すてきな三にんぐみ/トミー・アンゲラー

『すてきな三にんぐみ』は、フランス出身の絵本作家トミー・アンゲラー(Tomi Ungerer)による絵本で、原題はThe Three Robbers。1961年にアメリカで発行され、その後世界中で愛されています。物語は、三人の黒いマントをまとった泥棒が主人公。夜ごと旅人を襲い財産を奪っていましたが、ある日、孤児の少女と出会い、彼女の心の温かさに触れることで人生を変える決断をします。ユーモアとやさしさが溢れるストーリーと、大胆な黒と鮮やかな赤・青のイラストが魅力的で、子どもから大人まで楽しめる作品です。「悪が善に転じる」というテーマが、心温まるメッセージとして伝わります。

略歴

トミー・アンゲラー(Tomi Ungerer, 1931-2019)は、フランスのアルザス地方で生まれた絵本作家、イラストレーター、画家です。第二次世界大戦中、ナチス占領下で複雑な少年時代を送りました。1956年にアメリカへ渡り、ニューヨークで広告や絵本制作に携わります。1961年発表の『すてきな三にんぐみ』や『クルムさんのしごと』で世界的な成功を収めました。社会風刺やブラックユーモア、独特な色彩感覚が特徴で、子ども向け作品だけでなく、大人向けのイラストや政治的メッセージを込めたポスターも手がけました。生涯を通じて300冊以上の著書を残し、多岐にわたるジャンルで活躍した多才なアーティストです。

おすすめ対象年齢

『すてきな三にんぐみ』の対象年齢は、3歳から小学校低学年(8歳頃)までがおすすめです。簡潔な文章と大胆な色使いのイラストは、小さな子どもでも楽しめる一方、物語のテーマには「心の変化」や「善悪の転換」といった深みがあり、年齢が上がるにつれて新たな発見があります。また、読み聞かせにも適しており、大人と一緒に楽しむことでさらに豊かな解釈が広がる作品です。親子の読書時間にもぴったりで、多くの世代に愛される普遍的な魅力を持っています。

レビュー

『すてきな三にんぐみ』は、大胆でユーモアに溢れる絵本でありながら、深いテーマを持つ名作だと感じました。最初はただの悪党と思わせる三人の泥棒が、孤児の少女との出会いをきっかけに、人助けを始める展開は驚きと感動を与えてくれます。特に、黒を基調としたイラストが生む独特の緊張感と、物語が進むにつれ明るさを増す色使いが印象的で、変化する彼らの心情を視覚的にも楽しめました。悪が善へと変わるという普遍的なメッセージは、子どもだけでなく大人にも響きます。怖さ、温かさが絶妙に調和し、何度でも読み返したくなる魅力的な絵本です。

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