
『こねこのトムのおはなし』は、ビアトリクス・ポターによる原作『The Tale of Tom Kitten』を、いしいももこが翻訳した絵本です。原作は1907年にイギリスで発表され、日本語版は2019年に福音館書店から新装版が発売されています。物語は、やんちゃな3匹の子猫、トム、モペット、ミトンが新しい服を汚してしまうエピソードを描いています。ポターの繊細で愛らしいイラストと、いしいももこの温かみのある翻訳が魅力の作品です。
略歴
ビアトリクス・ポター
ビアトリクス・ポター(Beatrix Potter,1866 – 1943)は、イギリスの絵本作家であり、自然科学者、環境保護活動家でもあります。裕福な家庭に生まれ、幼少期から自然や動植物に興味を持ちました。独学で絵を学び、観察力に優れた彼女は、細密な動植物のスケッチで注目されます。1902年、代表作『ピーターラビットのおはなし』を発表し、大ヒットとなりました。その後も動物を主人公とした絵本を次々と執筆し、児童文学の金字塔を築きました。また、晩年は湖水地方の環境保護に尽力し、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈しました。彼女の作品は、今も世界中で愛されています。
石井桃子(訳)
石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、4歳以上とされています。物語の内容やイラストの細やかさから、幼児から小学校低学年まで幅広く楽しめる作品です。
レビュー
『こねこのトムのおはなし』は、子猫たちの無邪気で愛らしい行動が微笑ましく描かれています。ポターの描く自然豊かな風景や動物たちの表情は、読者を物語の世界に引き込みます。また、いしいももこさんの翻訳は、子どもたちに親しみやすい言葉遣いで、読み聞かせにも最適です。親子で一緒に楽しめる、心温まる一冊としておすすめします。