エリック・カール作、もりひさし訳の絵本『くもさんおへんじどうしたの』は、風に乗って農場にやってきた一匹のクモが、動物たちの誘いにも返事をせず、黙々と巣を作り続ける姿を描いています。原作は『The Very Busy Spider』で、1984年にアメリカで発行されました。日本語版は1985年に偕成社から発行されました。この絵本の特徴は、クモの巣が浮き出ており、触って楽しめる点です。また、動物たちの鳴き声も登場し、子どもたちの興味を引きます。
略歴
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
もり ひさし(訳)
もり ひさし(本名:森久保仙太郎)は、1917年に神奈川県津久井郡で生まれ、鎌倉師範学校を卒業後、小学校教師として勤務しました。教育者としての経験を活かし、児童文学作家や翻訳家としても活躍しました。特に、エリック・カールの『はらぺこあおむし』やガブリエル・バンサンの作品など、多くの絵本の翻訳を手掛けました。また、わかやまけんの「こぐまちゃんえほん」シリーズの制作にも関わり、こぐま社の設立にも参加しました。2018年に亡くなるまで、教育者、歌人、児童文学作家として多彩な活動を続けました。
おすすめ対象年齢
対象年齢は、出版社の情報によれば3歳からとされています。
レビュー
この絵本は、エリック・カールの鮮やかなイラストとシンプルなストーリーが特徴です。クモが一心不乱に巣を作る姿は、集中力や勤勉さの大切さを教えてくれます。また、ページごとに登場する動物たちの鳴き声を親子で真似しながら読むことで、読み聞かせの時間がより楽しくなります。触覚的な仕掛けもあり、子どもたちの感覚を刺激します。子どもたちの興味を引きつける、優れた作品ですね。