『わにわにとあかわに』(文:小風さち/絵:山口マオ)は、2013年に福音館書店より刊行されたシリーズ第5作目。主人公のわにわにが、ある日静まり返った家の廊下を「ずるずりずるずり」と歩いていると、“クィ…” と鳴く小さな赤いわに(あかわに)と出会います。その後、プリンを一緒に食べたり、お風呂で水浴びしたり、縁側で日向ぼっこしたり…と、ふたりの穏やかでほっこりする日常が木版画の質感豊かに描かれています。擬音語も「ぐにっ ぐなっ」や「あかわにの足音“カシャカシャ”」など音のリズムが楽しく、読むたびに心がぽかぽか温まる一冊です
略歴
小風 さち
小風さち(こかぜさち,1955年東京生まれ)は、1977〜87年にイギリス・ロンドン郊外で暮らし、帰国後に絵本作家として活躍。代表作に「わにわに」シリーズや『とべ!ちいさいプロペラき』『はちみついろのうま』などがあります。翻訳絵本や児童書の訳書も手がけ、『ゆびぬき小路の秘密』で1994年に野間児童文芸新人賞を受賞。また、福音館書店や講談社などの児童書出版社を中心に精力的に作品を発表し、現在は東京都在住。独特のユーモアとリズムある文章で、子どもの心をつかみ続けています。
山口 マオ(絵)
山口マオさん(やまぐちまお,1958年千葉県生まれ)は、東京造形大学絵画科を卒業後、木版画を主軸にイラストレーター、版画家として活動。絵本「わにわに」シリーズのほか、『てのひらむかしばなし 十二支のはじまり』や『かにのしょうばい』『なりました』などを手がけ、雑誌・広告・グッズなど多岐に展開。福音館書店、岩波書店、鈴木出版などで作品を発表。絵本づくりでは、作家との共同作業を経て唯一無二の世界観を築くスタイルが特徴です。
おすすめ対象年齢
わにわにシリーズはどれも小さなお子さん向けですが、『わにわにとあかわに』は特に2歳〜4歳くらいの子にぴったり。短い文章にリズム感のある擬音が多く、聞いているだけでも楽しい構成です。わにわにが小さなあかわにをそっと見守る姿は、きょうだいがいる家庭にもおすすめ。怖そうに見えるキャラが実は優しい、というギャップが、子どもに“やさしさ”や“思いやり”を自然と伝えてくれる一冊です。読み聞かせにもぴったり!
レビュー
一見ゴツくて怖そうなわにわにが、小さなあかわにに優しく寄り添う姿に、心がじんわり温まります。「ずるずり」と歩くワニの重みと、「カシャカシャ」と駆け寄る赤いワニの軽快さの対比が、木版画の質感と相まって情景を生き生きと伝えてくれます。プリンをぺろっと平らげ、お風呂に入って縁側で並んでお昼寝する―そんな穏やかでほんわかした時間が、読み手にも心地よく流れます。擬音語が多く、親子で声に出して読むと、自然と笑顔になれるんです。最後にあかわにが静かに帰っていくラストシーンは切なくて、でもちゃんとあたたかい。不思議と毎回読後に「また会えるかな?」って思っちゃう、クセになる絵本です。