『わにわにのおでかけ』(文:小風さち/絵:山口マオ)は、2007年に福音館書店の幼児絵本シリーズとして単行本化されています。夏の夜、なかなか寝つけないわにわには、家の外で聞こえた足音に誘われてこっそり縁日へおでかけ。「ずりずりづづづ」という擬音と共に、綿あめ屋、金魚すくい、お祭りの提灯や屋台を巡り、最後は大迫力の花火を見上げて満足そうに帰るストーリー。木版画のざらっとした質感が、夜のムードやわにわにの存在感を際立たせ、幼児から大人まで楽しめる一冊です。
略歴
小風 さち
小風さち(こかぜさち,1955年東京生まれ)は、1977〜87年にイギリス・ロンドン郊外で暮らし、帰国後に絵本作家として活躍。代表作に「わにわに」シリーズや『とべ!ちいさいプロペラき』『はちみついろのうま』などがあります。翻訳絵本や児童書の訳書も手がけ、『ゆびぬき小路の秘密』で1994年に野間児童文芸新人賞を受賞。また、福音館書店や講談社などの児童書出版社を中心に精力的に作品を発表し、現在は東京都在住。独特のユーモアとリズムある文章で、子どもの心をつかみ続けています。
山口 マオ(絵)
山口マオさん(やまぐちまお,1958年千葉県生まれ)は、東京造形大学絵画科を卒業後、木版画を主軸にイラストレーター、版画家として活動。絵本「わにわに」シリーズのほか、『てのひらむかしばなし 十二支のはじまり』や『かにのしょうばい』『なりました』などを手がけ、雑誌・広告・グッズなど多岐に展開。福音館書店、岩波書店、鈴木出版などで作品を発表。絵本づくりでは、作家との共同作業を経て唯一無二の世界観を築くスタイルが特徴です。
おすすめ対象年齢
対象年齢はおおむね2歳から4歳くらい。繰り返しの擬音「ずりずりづづづ」「むんむんむん」などが多く、リズム感たっぷりで幼児でも真似しやすいです。また、縁日や花火といった夏の楽しい風景が盛り込まれているので、季節感を感じつつ、読み聞かせやお話しの導入にもぴったり。夜のお出かけがワクワクする設定で、お祭り気分を味わえます。
レビュー
この本の魅力は、ゴツいワニが真夜中こっそり縁日へ繰り出すシュールなユーモア!「ずりずりづづづ」と足音を立てながら、提灯の下を進むわにわには、ひそかにワクワクしてる感がすごく可愛いです。木版画ならではの質感で、夜の空気感や祭りのざわめきが手に取るように感じられるのが素晴らしいですね。金魚すくいや綿あめ、そして大きな花火…わにわにと一緒に夏の縁日体験をしている気分に。最後に満足そうに「よしよしよし」と家に帰るシーンで、ちょっとホッとして温かい気持ちに。大人も子どもも“縁日へ行ったらこんな感じ?”って妄想しながら楽しめる、夏の夜の冒険絵本です。