かいじゅうたちのいるところ/モーリス・センダック

モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』(Where the Wild Things Are)は、1963年に発表され、1975年に日本で初版が発行されました。絵本のクラシックとして世界中で愛され続けています。主人公は、やんちゃな男の子マックス。狼の着ぐるみを着たまま家の中で大暴れした彼は、罰として自分の部屋に閉じ込められます。すると彼の想像力が働き、部屋は不思議な森に変わり、海を渡って「かいじゅうたちのいるところ」にたどり着きます。マックスはかいじゅうたちを従える「王」となり、彼らと楽しいひとときを過ごしますが、最終的に愛する家族の元に帰りたくなる物語です。この絵本は、子どもの怒りや冒険心、安心感をうまく表現し、イマジネーションに満ちたセンダックのイラストが物語を深く彩っています。

略歴

モーリス・センダック

モーリス・センダック(Maurice Sendak、1928年 – 2012年)はアメリカの絵本作家、イラストレーターです。ニューヨークのブルックリンでポーランド系ユダヤ人の家庭に生まれ、幼少期から絵を描くことに情熱を注いでいました。センダックは、子どもの内面や感情を描くことに優れ、特に子どもの「怒り」や「反抗心」といった感情をテーマにした作品で独自のスタイルを確立しました。『かいじゅうたちのいるところ』の成功により、彼は世界的に著名な絵本作家となり、その後も多くの作品で幅広い年齢層に影響を与えました。

じんぐうてるお(訳)

じんぐう てるお(神宮 輝夫)は、1932年に群馬県高崎市で生まれました。早稲田大学第一文学部英文科を卒業し、同大学院文学研究科英文学専攻修士課程を修了しました。在学中から早大童話会に参加し、鳥越信、古田足日、山中恒らと活躍しました。英国児童文学の翻訳を精力的に行い、アーサー・ランサム全集のほか、リチャード・アダムズ『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』、モーリス・センダック『かいじゅうたちのいるところ』など、多くの作品を手がけました。1964年に『世界児童文学案内』で日本児童文学者協会賞を受賞し、2009年には国際グリム賞を受賞しました。青山学院大学教授、白百合女子大学教授などを歴任し、2021年に89歳で死去しました。

おすすめ対象年齢

この絵本は、主に3歳から6歳の子どもを対象としていますが、想像力豊かで少し風変わりなストーリーは、幅広い年齢層に響くため、小学校低学年にも人気があります。また、大人が読んでも感動する深いテーマ性も兼ね備えています。

レビュー

『かいじゅうたちのいるところ』は、子どもの心の動きを詩的かつ象徴的に表現した絵本です。マックスがかいじゅうの島で王になる姿は、子どもの冒険心や怒りの発散を表しており、センダックのイラストとともにリアルな感情が浮き彫りになっています。この物語は、誰もが一度は持つ「冒険したい気持ち」と「家に帰りたい気持ち」を巧みに融合させ、特に「帰りたい」という気持ちが親子の愛情を象徴するものとして描かれている点が印象的です。子どもたちにとっても大人にとっても、想像力と愛が共鳴する美しい作品だと感じます。

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