こびとのくつや/グリム

『こびとのくつや』は、グリム兄弟原作の「Die Wichtelmänner」を、いもとようこ氏が絵と文を担当し再話した絵本です。本書は、正直者の靴屋が貧困に陥り、最後の革で靴を作ろうとしたところ、夜中に現れた二人のこびとが見事な靴を作り上げ、靴屋の生活が好転していく心温まる物語です。いもと氏のやさしいタッチの貼り絵が物語の温かさを引き立てています。本書は2006年に日本の金の星社から出版されました。

略歴

グリム兄弟

グリム兄弟[ヤーコプ・グリム (Jakob Grimm) とヴィルヘルム・グリム (Wilhelm Grimm)]は、19世紀ドイツを代表する言語学者であり民俗学者です。彼らは1785年(ヤーコプ)と1786年(ヴィルヘルム)にドイツのハーナウに生まれ、マールブルク大学で法学を学ぶ中で民族文化や言語への関心を深めました。特に民間伝承や童話に強い興味を抱き、各地の口承文学を収集し、それを基にした『グリム童話集』を1812年に初めて出版しました。この作品は、単なる子供向けの物語ではなく、当時の民衆文化や価値観を反映した重要な文化遺産として高く評価されています。兄ヤーコプは特にドイツ語の文法研究や辞書編纂にも尽力し、弟ヴィルヘルムは物語の文体や編集に秀でていました。彼らの活動は、ドイツの統一と民族意識の高揚にも寄与しました。
彼らの作品には、『赤ずきん』や『おおかみと七ひきのこやぎ』、『ブレーメンのおんがくたい』、『こびとのくつや』、「シンデレラ」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」など、今日でも世界中で愛されている物語が多く含まれています。

いもとようこ

いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、幼児から小学校低学年までを主な対象としています。特に3歳から5歳頃の子どもたちに適しており、親子での読み聞かせや、子どもが自分で読む入門書としても楽しめる内容です。物語のシンプルさと温かみのあるイラストが小さな子どもたちの心を引き付けますが、内容の深みや教訓は大人にとっても興味深いものです。年齢を問わず、多くの人が楽しめる一冊と言えるでしょう。

レビュー

本書は、困難な状況でも他者の助けや善意が希望をもたらすことを教えてくれます。いもと氏の柔らかな貼り絵は、物語の温かさを一層引き立て、読者の心に深く響きます。子どもだけでなく、大人も楽しめる一冊であり、親子での読み聞かせにも最適です。また、物語を通じて感謝の心や他者への思いやりの大切さを学ぶことができる点も魅力的です。

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