
『風さん』は、ジビュレ・フォン・オルファース作、秦理絵子訳による絵本です。原作「Windchen」は1910年にドイツで発行され、日本語版は2003年に平凡社から発行されました。物語は、少年が風の精「風さん」と出会い、野を駆け巡り、木に登り、落ち葉を舞い上げて遊ぶ中で、生き生きと変化していく姿を描いています。自然の美しさと子どもの成長を優しく表現したドイツ古典絵本の傑作です。
略歴
ジビレ・フォン・オルファース(絵)
ジビレ・フォン・オルファース(Sibylle von Olfers)は1881年、ドイツの貴族オルファース家に生まれました。幼少期から自然や絵画への関心を深め、成長するとベルリン女子美術学校に進学し、本格的に絵を学びました。その後、彼女は修道院に入り、宗教生活を送りながら教育や芸術活動に取り組むというユニークな道を選びました。修道院では小学校で美術を教える一方、自身の創作活動も継続しました。彼女の作品は、自然を愛する心や生命の循環を繊細に表現したものが多く、その代表作として1906年に発表された『Etwas von den Wurzelkindern(根っこのこどもたち目をさます)』が挙げられます。この絵本は、春の訪れを土の中の根っこの子どもたちが目覚め、活動する様子を愛らしく描き、世界中の読者に親しまれています。彼女は1916年にわずか35歳で病気により亡くなりましたが、その短い生涯の中で、自然の美しさや生命の大切さを伝える絵本作家として確固たる地位を築きました。その作品は今なお、多くの人々に感動を与え続けています。
秦 理絵子(訳)
秦 理絵子(はた りえこ)氏は、東京生まれで、早稲田大学第一文学部哲学科を卒業後、1981年にオイリュトミーと出会いました。1982年にミュンヘン・オイリュトミー学校に留学し、1986年にディプロムを取得。1987年の帰国以降、日本各地でオイリュトミストとして活動し、幼児から大学生、大人まで幅広い層にオイリュトミーを指導しています。また、NPO法人東京シュタイナーシューレの教員も務め、オルファースの絵本の温かい感触に魅了され、子育ての中でも親しんできました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、3歳から5歳以上とされています。自然と触れ合う楽しさや、風との遊びを通じて感じる季節の移ろいを、幼い子どもたちに伝える内容となっています。
レビュー
『風さん』は、風の精と少年の交流を通じて、自然との触れ合いや子どもの成長を描いた作品です。オルファースの繊細で美しいイラストは、自然の豊かさと子どもの純粋さを見事に表現しています。読み進めるうちに、まるで自分も風と一緒に遊んでいるかのような感覚を味わえます。子どもだけでなく、大人も心温まる物語として楽しめる一冊です。