『おおかみと七ひきのこやぎ』は、グリム兄弟による有名なドイツの民話です。原作のドイツ語タイトルは「Der Wolf und die sieben jungen Geißlein」で、初めて出版されたのは1812年です。このお話は、悪いオオカミが留守中の母ヤギの家に侵入しようとし、賢い子ヤギたちがそれに立ち向かう物語です。日本語版は1967年発行です。
ストーリーでは、母ヤギが子ヤギたちにオオカミの特徴を教え、オオカミから身を守る方法を伝える場面があります。しかし、オオカミはずる賢く、巧みに姿を変えて子ヤギたちを騙そうとします。最終的には、母ヤギと生き残った子ヤギたちの協力で、オオカミを懲らしめ、ハッピーエンドを迎えます。
日本では、この物語が絵本としてたびたび紹介され、さまざまな絵本作家やイラストレーターによって再解釈されています。豊かな表現で子供たちに親しまれ、教訓や知恵の重要性を伝える一冊として読み継がれています。
略歴
グリム兄弟
グリム兄弟[ヤーコプ・グリム (Jakob Grimm) とヴィルヘルム・グリム (Wilhelm Grimm)]は、19世紀ドイツを代表する言語学者であり民俗学者です。彼らは1785年(ヤーコプ)と1786年(ヴィルヘルム)にドイツのハーナウに生まれ、マールブルク大学で法学を学ぶ中で民族文化や言語への関心を深めました。特に民間伝承や童話に強い興味を抱き、各地の口承文学を収集し、それを基にした『グリム童話集』を1812年に初めて出版しました。この作品は、単なる子供向けの物語ではなく、当時の民衆文化や価値観を反映した重要な文化遺産として高く評価されています。兄ヤーコプは特にドイツ語の文法研究や辞書編纂にも尽力し、弟ヴィルヘルムは物語の文体や編集に秀でていました。彼らの活動は、ドイツの統一と民族意識の高揚にも寄与しました。
彼らの作品には、『赤ずきん』や『おおかみと七ひきのこやぎ』、『ブレーメンのおんがくたい』、『こびとのくつや』、「シンデレラ」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」など、今日でも世界中で愛されている物語が多く含まれています。
フェリクス・ホフマン(絵)
フェリクス・ホフマン(1911年 – 1975年)は、スイス出身の画家・イラストレーターで、絵本挿絵やステンドグラスなど多岐にわたる分野で活躍しました。バーゼルやカールスルーエ州立美術学校で学び、宗教画やグリム童話の挿絵で国際的な評価を得ました。特に繊細で感情豊かなイラストは物語の魅力を引き立て、多くの読者を魅了しました。1960年と1962年にアンデルセン・オナーリスト賞を受賞し、現代絵本文化に大きな影響を与えました。彼の作品は現在も世界中で愛されています。
瀬田貞二(訳)
瀬田貞二(1916年 – 1979年)は、東京出身の翻訳家、児童文学者です。東京帝国大学文学部を卒業後、絵本の翻訳や再話を多数手がけ、日本の絵本文化に大きく貢献しました。特に、グリム童話やアンデルセン童話の翻訳で知られ、その流麗な日本語訳は多くの読者に親しまれています。
代表作には『グリム童話全集』の翻訳があり、日本語の美しさと原作の忠実さを兼ね備えた訳文が特徴です。『おおかみと七ひきのこやぎ』などの絵本翻訳でも活躍し、日本の児童文学文化の発展に大きく貢献しました。
おすすめ対象年齢
『おおかみと七ひきのこやぎ』の絵本の対象年齢は、一般的に3歳から6歳の幼児や未就学児に向けて設定されています。この物語は、比較的わかりやすいストーリー展開と、親しみやすいキャラクターによって、小さな子どもでも楽しめるようになっています。また、子どもたちに「危険を回避するための知恵」や「親の教えを守ることの大切さ」といったメッセージが含まれており、教育的な要素もあります。
特に幼児期の子どもは、母ヤギと子ヤギたちがオオカミの襲撃にどう対処するかに興味を持ちやすく、親子での読み聞かせにもぴったりです。物語の中で、母ヤギがオオカミから身を守るための知恵を子ヤギたちに伝えるシーンは、親子で「危険に対処する方法」について話し合う良いきっかけにもなります。そのため、保護者の方にとっても、子どもが物語を通じて学びや気づきを得られる点で好評です。
各出版物によってイラストや表現が異なる場合がありますが、多くの絵本は鮮やかな色彩やかわいらしい描写でオオカミやヤギたちが描かれており、視覚的にも子どもたちを引きつける工夫がされています。
レビュー
この絵本は、親子の絆や知恵の大切さを伝える物語であり、ホフマンの美しいイラストと瀬田さんの名訳が相まって、読む者の心に深く響きます。おおかみの狡猾さや子やぎたちの純粋さ、母やぎの愛情深さが巧みに描かれており、子どもたちにとってはスリルと安心感を同時に味わえる作品です。また、絵の細部にまでこだわりが感じられ、ページをめくるたびに新たな発見があります。親子で一緒に読みながら、物語の展開や登場人物の気持ちについて話し合うことで、より深い理解と共感を得られるでしょう。