1、2、3どうぶつえんへ/エリック・カール

エリック・カールさんの『1、2、3どうぶつえんへ』(原題 1,2,3 To the Zoo、1968年 アメリカ初版、1970年 偕成社日本語版)は、字のない数の絵本です。カラフルな汽車が走り、1両めにはゾウが1頭、2両めにはカバが2頭、3両めにはキリンが3頭……と動物が次々登場。ページをめくるたびに数字の世界が広がります。そして10両目には鳥が10羽!最後は動物園に着いて、それぞれの動物たちが自分の場所へ。数字の楽しさと動物たちのかわいらしさを一緒に味わえる、エリック・カールらしい色鮮やかでユーモアたっぷりの絵本です。

略歴

エリック・カール

エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。

おすすめ対象年齢

『1、2、3どうぶつえんへ』は、数字に興味を持ち始める2歳頃から楽しめる絵本です。字がないので、子ども自身が絵をじっくり眺めながら数を数えたり、おとなが声をかけて一緒に数えることで、自然と数の概念に親しめます。鮮やかな色づかいとわかりやすい構成は、未就学児にもぴったり。読み聞かせだけでなく、親子のコミュニケーションにもおすすめの一冊です。

レビュー

この絵本の魅力は、言葉がなくても物語と数の世界を自然に感じられるところです。ページをめくるたびに動物が増えていき、汽車がどんどんにぎやかになっていくのは、とてもワクワクします。子どもと一緒に「ゾウさんは1匹!カバさんは2匹!」と声を出しながら数えると、ただの数字遊びがぐんと楽しくなります。エリック・カールさんらしい鮮やかな色彩と大らかなタッチが、動物たちのユーモラスさを引き立てていて、絵を眺めるだけでも楽しいです。数字を学ぶ最初の一歩としても、親子の時間を彩る絵本としてもおすすめです。