くんちゃんのもりのキャンプ/ドロシー・マリノ

『くんちゃんのもりのキャンプ』(作・絵:ドロシー・マリノ/訳:間崎ルリ子、ペンギン社 1983年刊)は、原題 “Buzzy Bear Goes Camping” として1964年にアメリカで出版された絵本です。物語は、こぐまのくんちゃんがいとこのアレックと森でキャンプに挑戦する場面から始まります。途中で出会った鳥や動物たちの暮らしをまねしてみますが、うまくいかず失敗ばかり。それでもアレックの助けや、来た道をしっかり覚えていた自分の力に気づき、成長していきます。自然の中での発見や学びを、親しみやすい絵と優しい語り口で描いた一冊です。

略歴

ドロシー・マリノ

ドロシー・マリノ(Dorothy Marino,1908 – 1993)さんは、アメリカの児童文学作家・イラストレーターです。彼女は、子どもたちの身近な体験や心の動きを、ユーモラスで温かい眼差しで描くことを得意とされていました。そして作品に登場する動物たちは、まるで人間の感情を持っているかのように生き生きと描かれ、特に子どもたちの共感を呼ぶことが大きな魅力です。代表作としては、『くんちゃんのはじめてのがっこう』の他にも、日本でも出版されている「こぐまのくんちゃん」シリーズなどがあります。子どもたちが共感できるような、日々の出来事をやさしく描き出す作風が魅力的ですね。

まさき るりこ(訳)

まさきるりこ(間崎ルリ子)さんは、1937生まれの長崎県出身の翻訳家です。慶應義塾大学を卒業された後、アメリカに渡り、ボストンの大学院で図書館学を学びました。その後、ニューヨークの公共図書館児童室で勤務された経験をお持ちです。1964年に『いたずらこねこ』(福音館書店)の翻訳を担当し、その後もリズム感ある日本語と読みやすさで親子に親しまれています。1968年からは、ご自身で神戸市に私設の児童図書館「鴨の子文庫」を設立し、47年間も主宰されました。また、東京子ども図書館の評議員や理事も務められています。翻訳家として『もりのなか』の他にも、多くのの絵本を翻訳されているそうです。彼女の翻訳によって、多くの素晴らしい海外の絵本が日本に届けられてきました。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、だいたい3歳から6歳くらいのお子さんにおすすめです。特に、初めてのキャンプや、新しいことに挑戦するお子さんには、とても共感できる部分が多いと思います。自分と違う誰かになろうとして失敗したり、自分の得意なことを見つけたりするくんちゃんの姿は、子どもたちの成長と重なります。読み聞かせを通して、「自分らしさ」について話す良いきっかけにもなりますよ。

レビュー

この絵本を読んで、失敗ばかりしているくんちゃんの姿が、なんだかとても愛おしく感じられました。誰かの真似をしてもうまくいかない、でも、自分のやり方を見つければうまくいく。このメッセージが、とてもシンプルで心に響きます。特に、帰り道だけは得意だったくんちゃんが、誇らしげに道を教えるシーンは、読んでいて胸が温かくなりますね。自分らしさを肯定してくれる、本当に優しい物語です。ドロシー・マリノさんの描く、素朴で温かい絵が、ストーリーをさらに魅力的にしています。