村田エミコさんの『フーちゃん みなかった?』(2015年 福音館書店)は、病院が大嫌いなねこのフーちゃんが、しっぽに包帯を巻いたまま逃げ出すところから始まります。公園を抜け、商店街を駆け抜け、必死に探す男の子は町の人々に「フーちゃん みなかった?」と声をかけます。ページのあちこちにフーちゃんが隠れていて、読みながら探す楽しさがあります。版画ならではのあたたかみのあるタッチで、生活感あふれる街並みがいきいきと描かれているのも魅力。子どもと一緒に「かくれんぼ」をしているような気分で楽しめる一冊です。
略歴
村田 エミコ
村田エミコさんは1969年、東京都生まれの木版画家・絵本作家です。1993年頃から木版画制作を始め、以来毎年または数回の個展を開催し、絵本原画やオリジナル版画などを発表し続けています。絵本作品には『つぎ、とまります』(福音館書店)、『そばやのまねきねこ』(岩崎書店)、『おふろおばけ』(大日本図書)、『よるのとこやさん』(フレーベル館)など多数があります。その画風は温かみのある柔らかな色彩と版画らしい版の重なりが特徴で、子どもの想像力を刺激する、親しみやすくも懐かしい世界を描き出しています。
おすすめ対象年齢
『フーちゃん みなかった?』は、福音館書店の「こどものとも」シリーズとして発行され、幼児から小学校低学年くらいまでが楽しめる内容です。物語を追いながらフーちゃんを探す楽しさは、小さな子でも直感的に楽しめますし、版画の街並みの描写は少し大きな子にとっても発見が多く、幅広い年齢で味わえる絵本です。
レビュー
この絵本は、ただ読むだけでなく「探す」楽しさがあるのが最大の魅力だと感じました。男の子の必死さとは裏腹に、自由気ままに隠れているフーちゃんの姿がかわいらしく、子どもたちと一緒にページをめくりながら「どこにいるかな?」と盛り上がれるのがいいところです。さらに版画で描かれた街の風景には、懐かしさや生活感が漂っていて、大人の私にとっても見入ってしまうほど。ストーリーと遊び心、そして絵の温かみが調和した、親子で繰り返し楽しめる絵本だと思いました。


