エルサ・ベスコフ作・絵、石井登志子訳の『ペーテルおじさん』(原題:Herr Peter)は、1948年にスウェーデンで初版発行され、日本語版は2002年にフェリシモ出版から刊行されました。お話は、やさしくて働き者のペーテルおじさんが町のみんなから慕われているところから始まります。ある日、そのおじさんの家が取り壊されることになり、驚いた子どもたちは彼を助けるために力を合わせます。エルサ・ベスコフらしい温かなストーリーと、細やかな挿絵が魅力的で、人と人とのつながりの大切さをやさしく伝えてくれる作品です。
略歴
エルサ・ベスコフ
エルサ・ベスコフ(Elsa Beskow, 1874–1953)は、スウェーデン生まれの絵本作家・画家です。ストックホルム出身で、美術学校で学んだ後、雑誌の挿絵を描きながら創作活動を始めました。1897年に発表した『ちいさな ちいさな おばあちゃん』で絵本作家としてデビュー。その後も『おひさまのたまご』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』など、自然と子どもたちをテーマにした作品を多く生み出しました。彼女の作品は、温かなストーリーと繊細で優しい水彩画が魅力で、今も世界中で読み継がれています。
石井 登志子(訳)
石井登志子(いしい としこ)さんは、日本の児童文学翻訳家。東京女子大学卒業後、長年にわたりスウェーデン児童文学の翻訳を手がけており、特にエルサ・ベスコフやアストリッド・リンドグレーン作品の日本語訳で知られています。絵本や児童小説のほか、スウェーデン文化や暮らしに関する紹介文も執筆。温かくリズム感のある翻訳は、原作の雰囲気を壊すことなく日本の読者に伝わるよう工夫されています。ベスコフの世界観とも相性が良く、多くの読者に親しまれています。
おすすめ対象年齢
『ペーテルおじさん』は、3歳ごろから小学校低学年くらいまでの子どもにおすすめの絵本です。人のやさしさや助け合いの心、まちの仲間意識をテーマにしており、子どもたちに大切な価値観を自然に伝えてくれます。読み聞かせにもぴったりのやさしい物語です。
レビュー
『ペーテルおじさん』は、読んでいて心がぽかぽかするような優しいお話です。困っている人のために子どもたちが自然と力を合わせる姿に、思いやりの気持ちや連帯感を感じました。ベスコフの描くペーテルおじさんは、ちょっとおしゃれで落ち着いた雰囲気の素敵なおじさん。挿絵の色使いもやさしく、北欧の町並みや暮らしがほんのり感じられます。今の時代にこそ、こんな人とのつながりや思いやりが大切だなあとしみじみ思える絵本。子どもだけでなく、大人の心にも響く一冊です。