『リサのいもうと』(原作名:“La Petite Sœur de Lisa”)は、アン・グットマン(Anne Gutman)作、ゲオルグ・ハレンスレーベン(Georg Hallensleben)絵による絵本で、2001年にフランスで発行されました。本作は、主人公リサが妹の誕生に戸惑いながらも、次第に受け入れていく過程を描いています。リサは最初、妹に対して複雑な感情を抱き、名前を「ゴミバコ」や「ゴキブリ」と考えるなど、やきもちを焼く様子がユーモラスに描かれています。しかし、妹が生まれ、周囲から「リサに似ている」と言われることで、次第に愛情が芽生え、最終的には「世界で一番かわいい妹」として受け入れるようになります。兄弟姉妹が生まれる子どもの心情をリアルに描写し、家族の絆や成長を温かく表現した作品です。
略歴
アン・グットマン
アン・グットマン(Anne Gutman)は、1970年にフランス・パリで生まれた絵本作家です。小説家であった父親の影響を受け、幼少期から創作活動に興味を持ちました。デザイナーとして出版社で勤務していた際、画家のゲオルグ・ハレンスレーベンと出会い、結婚しました。夫の助言を受けて作家活動を本格化し、彼と共に絵本制作を開始しました。主に文章と装丁を担当し、1999年に「リサとガスパール」シリーズを発表しました。このシリーズは世界的なベストセラーとなり、続いてコアラの女の子を主人公とした「ペネロペ」シリーズも手がけました。「ペネロペ」シリーズは『うっかりペネロペ』としてアニメ化され、日本でも高い人気を博しています。アン・グットマンの独特の文体と感動的なストーリーテリングで、多くの読者に愛されています。彼女の作品は、世界中で翻訳され、多くの子どもたちに読み聞かせされています。
ゲオルク・ハレンスレーベン(絵)
ゲオルク・ハレンスレーベン(Georg Hallensleben)は、1958年にドイツのヴッパータルで生まれた絵本画家です。 幼少期から水彩画に親しみ、高校卒業後に絵本の挿絵の仕事を始めました。 その後、パリでデザイナーとして活動していたアン・グットマンと出会い、結婚。以降はアンと共に絵本制作を行い、主にイラストを担当しています。 代表作として、架空の動物を主人公にした「リサとガスパール」シリーズや、コアラの女の子が主人公の「ペネロペ」シリーズがあり、これらの作品は世界中で愛されています。
石津 ちひろ(訳)
石津ちひろ(いしづ ちひろ)は、1953年に愛媛県で生まれた詩人、絵本作家、翻訳家です。 早稲田大学文学部仏文科を卒業後、3年間フランスに滞在し、その後、絵本作家や翻訳家として活動を開始しました。 自身の作品としては、『なぞなぞのたび』(絵:荒井良二、フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞を受賞し、『あしたうちにねこがくるの』(絵:ささめやゆき、講談社)で日本絵本賞を受賞しています。 また、詩集『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞するなど、多方面で活躍しています。 翻訳家としては、「リサとガスパール」シリーズ(ブロンズ新社)など、多くの作品を手がけています。
おすすめ対象年齢
『リサのいもうと』の対象年齢は、概ね3歳から6歳の未就学児向けとされています。この年齢層の子どもたちは、家族や兄弟について理解を深め始める時期であり、新しい家族を迎える際の喜びや戸惑いを共感しやすいです。また、簡潔なストーリー展開と温かみのあるイラストは、小さな子どもたちにも分かりやすく、親子での読み聞かせにも最適です。
レビュー
『リサのいもうと』は、新しい家族が加わる中での子どもの繊細な感情をユーモアを交えつつ描いた素晴らしい作品です。リサが妹に対して最初に抱く複雑な気持ちや、名前を「ゴミバコ」や「ゴキブリ」とするようなやきもちに思わず笑ってしまう場面もあります。しかし、妹が実際に生まれると、周囲から「リサに似ている」と言われたことをきっかけに、彼女の心境が変化していきます。最終的には「世界で一番かわいい妹」として愛情を示す姿が、非常に感動的です。
ゲオルグ・ハレンスレーベンのイラストは、柔らかな色合いと繊細な描写で物語に温かみを添え、リサの心情がより伝わりやすくなっています。この絵本は、新しい兄弟姉妹を迎える子どもたちが感じる喜びや葛藤に寄り添い、家族の絆と成長の大切さを自然に伝えてくれる一冊です。子どもにとっては共感を、親にとっては子どもの気持ちを知る手助けになる心温まる物語だと感じました。