いもとようこさんが絵と文を手掛けた絵本『あかずきんちゃん』は、グリム童話「Rotkäppchen」を原作とし、2007年日本の金の星社から出版されました。この作品は、赤い頭巾をかぶった少女が、おばあさんの家へおつかいに行く途中、狼に出会い、騙されてしまう物語です。「おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの?」という有名なやり取りが登場し、スリリングな展開が魅力です。いもとさんの温かみのあるイラストが、物語に優しさを添えています。
略歴
グリム兄弟
グリム兄弟[ヤーコプ・グリム (Jakob Grimm) とヴィルヘルム・グリム (Wilhelm Grimm)]は、19世紀ドイツを代表する言語学者であり民俗学者です。彼らは1785年(ヤーコプ)と1786年(ヴィルヘルム)にドイツのハーナウに生まれ、マールブルク大学で法学を学ぶ中で民族文化や言語への関心を深めました。特に民間伝承や童話に強い興味を抱き、各地の口承文学を収集し、それを基にした『グリム童話集』を1812年に初めて出版しました。この作品は、単なる子供向けの物語ではなく、当時の民衆文化や価値観を反映した重要な文化遺産として高く評価されています。兄ヤーコプは特にドイツ語の文法研究や辞書編纂にも尽力し、弟ヴィルヘルムは物語の文体や編集に秀でていました。彼らの活動は、ドイツの統一と民族意識の高揚にも寄与しました。
彼らの作品には、『赤ずきん』や『おおかみと七ひきのこやぎ』、『ブレーメンのおんがくたい』、『こびとのくつや』、「シンデレラ」、「白雪姫」、「ヘンゼルとグレーテル」など、今日でも世界中で愛されている物語が多く含まれています。
いもとようこ
いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、幼児から一般まで幅広く楽しめる内容となっています。特に、4歳児頃からの読み聞かせに適しており、物語を通じて人の話を聞く大切さを学ぶことができます。
レビュー
いもとようこさんが手掛ける『あかずきんちゃん』は、古典的なグリム童話の魅力を現代に伝える素晴らしい絵本です。彼女の柔らかく優しいタッチで描かれるイラストは、幼い読者に安心感を与えながらも、物語のスリルや緊張感をしっかりと伝えています。赤ずきんの愛らしさや狼の狡猾さが見事に表現されており、ページをめくるたびにストーリーの世界に引き込まれます。また、いもとさん独自の温かみのある描写が、この作品を子どもたちだけでなく、大人にも楽しめる絵本として昇華させています。この物語を通じて、善悪や他者を疑うことの重要性を優しく学べる点が大きな魅力です。世代を超えて楽しめる一冊として、家庭や学校での読み聞かせにも最適です。