たんじょうびのふしぎなてがみ/エリック・カール

エリック・カール作、もりひさし訳の絵本『たんじょうびのふしぎなてがみ』は、1978年に偕成社から刊行されました。原作名は『The Secret Birthday Message』で、1972年にアメリカで発行されています。物語は、主人公のチムが誕生日の前日に、星や三角、四角などの記号が描かれた不思議な手紙を見つけ、その手紙を手がかりに宝探しの冒険に出るというものです。カールの鮮やかなイラストと、読者が参加できる仕掛けが特徴で、子どもの誕生日をより楽しく演出してくれる一冊です。

略歴

エリック・カール

エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。

もり ひさし(訳)

もり ひさし(本名:森久保仙太郎)は、1917年に神奈川県津久井郡で生まれ、鎌倉師範学校を卒業後、小学校教師として勤務しました。教育者としての経験を活かし、児童文学作家や翻訳家としても活躍しました。特に、エリック・カールの『はらぺこあおむし』やガブリエル・バンサンの作品など、多くの絵本の翻訳を手掛けました。また、わかやまけんの「こぐまちゃんえほん」シリーズの制作にも関わり、こぐま社の設立にも参加しました。2018年に亡くなるまで、教育者、歌人、児童文学作家として多彩な活動を続けました。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、出版社の情報によれば3歳からとされています。ただし、他のレビューによれば、星や三角、四角などの記号の解読?があるため、5歳~6歳程度以上の子どもに読み聞かせるのが適しているでしょう。

レビュー

『たんじょうびのふしぎなてがみ』は、エリック・カールの独特なコラージュ技法と鮮やかな色彩が際立つ作品です。物語の中で、チムが手紙の指示に従って進む過程は、読者自身が宝探しをしているようなワクワク感を味わえます。また、ページに工夫された仕掛けがあり、子どもたちの好奇心を刺激します。誕生日をテーマにしているため、特別な日の読み聞かせにも最適です。親子で一緒に楽しみながら、絵本の世界に浸ることができるでしょう。