いぬがほしいの!/ジョン・エイジー

犬がどうしても欲しい女の子が動物保護センターを訪れます。しかし、案内係の男性がすすめるのはアリクイやヘビ、カエルなど、犬以外の動物ばかり。「犬がほしいの!」と言い続ける女の子との、かみ合わないやり取りがテンポよく続き、思わず笑ってしまいます。やがて男性が「なぜ犬がいいの?」と初めて尋ねたことで物語は意外な方向へ。ユーモアあふれる会話の中に、「家族になる」ということや動物との出会いの大切さが優しく描かれています。シンプルな絵と巧みな間、最後の心温まる展開が印象に残る一冊です。初版原題は『I Want a Dog』、初版発行国はアメリカ、発行年は2019年。日本語版は2022年に潮出版社から出版されています。

略歴

ジョン・エイジー

ジョン・エイジー(Jon Agee)さんは1960年、アメリカ・ニューヨーク州生まれの絵本作家・イラストレーター・漫画家。ニューヨークのクーパー・ユニオン美術学校で学び、1981年から数多くの絵本を発表しています。言葉遊びやナンセンスユーモア、シンプルながら表情豊かなイラストを得意とし、子どもだけでなく大人も楽しめる作品で高い評価を受けています。代表作には『かべのあっちとこっち』、『フェリックス・クルーソーのふしぎなえ』、『マジシャンミロのふしぎなぼうし』、『いぬがほしいの!』などがあり、原作はニューヨーク・タイムズ・ベスト絵本選出やALA(アメリカ図書館協会)推薦図書など受賞・選出歴も多数。「知る人ぞ知る海外絵本作家」という位置づけですが、翻訳されている作品はいずれも評価が高いです。特に読み聞かせをする保護者から支持されています。

いけもとなおみ(訳)

いけもと なおみ(池本尚美)さんは、海外児童文学や絵本の翻訳を手がける翻訳者です。子どもたちに原作のユーモアや温かさが自然に伝わる日本語表現に定評があり、英語圏の絵本を中心に翻訳活動を続けています。『いぬがほしいの!』では、ジョン・エイジー作品特有のテンポの良い掛け合いや、ユーモラスな言葉のリズムを読みやすい日本語へ巧みに置き換えています。公表されているプロフィールは多くありませんが、翻訳者として海外絵本の魅力を日本の読者へ届ける役割を担っています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は3〜7歳頃、特に幼児から小学校低学年におすすめです。英語版では5〜8歳が対象とされていますが、日本では読み聞かせなら3歳頃から十分楽しめます。同じセリフが繰り返されるため、小さな子どもも参加しやすく、「次は何の動物が出てくるかな?」と予想しながら読めます。最後には思いやりや動物との出会いについて自然に考えられる内容で、親子の読み聞かせにもぴったりです。

レビュー

この絵本の魅力は、何より「会話のおもしろさ」です。女の子は最初から最後まで「犬がほしい」という気持ちをぶれずに伝え続ける一方、案内係は次々と見当違いな動物をすすめます。そのズレが繰り返されるたびに笑いが生まれ、ページをめくる手が止まりません。でも、本当に心に残るのはラストです。「どんな動物がいいか」ではなく、「どうしてその動物を迎えたいのか」という気持ちに目を向ける展開がとても温かく感じられました。ユーモアたっぷりなのに、命や家族との出会いについてもさりげなく伝えてくれる、ジョン・エイジーらしい優しさにあふれた絵本だと思います。