『ウィンクルさんとかもめ』は、エリザベス・ローズ 文、ジェラルド・ローズ 絵、ふしみ みさを さん訳による絵本で、日本語版は2006年に岩波書店から刊行されました。原題は 『Old Winkle and the Seagulls』。1960年にイギリスのFaber and Faber から出版され、1960年のケイト・グリーナウェイ賞を受賞した作品です。港町で突然魚が獲れなくなり、漁師たちは困り果てます。そんな中、周囲に笑われても海へ出続けるウィンクルさん。ある日、1羽のかもめに導かれた先で、カモメの大群と魚の群れに気づきます。自然の恵みの大切さを伝えてくれる一冊です。大胆な海の絵もとても印象的です。
略歴
エリザベス・ローズ
エリザベス・ローズ(Elizabeth Rose/1933–2020)さんはイギリスの児童文学作家です。美術学校で出会った夫のジェラルド・ローズさんと1955年に結婚し、その後は夫婦で数多くの絵本を制作しました。代表作には『ウィンクルさんとかもめ』のほか、『Wuffles Goes to Town』『How St. Francis Tamed the Wolf』などがあります。特に『ウィンクルさんとかもめ』は、ジェラルド・ローズさんの挿絵とともに高く評価され、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作として知られています。素朴であたたかい物語の中に、自然や人間の暮らしへの優しいまなざしがある作風が魅力です。
ジェラルド・ローズ(絵)
ジェラルド・ローズ(Gerald Rose/1935–2023)さんは、香港生まれのイギリス人絵本作家・イラストレーターです。幼少期をイギリスで過ごし、ロウストフト美術学校(Lowestoft School of Art)、その後、ロイヤル・アカデミー・スクール(Royal Academy Schools)で美術を学びました。細密でユーモラスな画風が特徴で、動物たちを生き生きと描いた作品で高く評価されています。1960年には『ウィンクルさんとかもめ』で英国の権威あるケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。代表作には『トラのじゅうたんになりたかったトラ』のほか、『Ahhh! Said Stork』などがあります。上品なユーモアと温かみのある絵で、多くの読者に親しまれている作家です。
ふしみ みさを(訳)
ふしみ みさを(伏見 操)さんは、1970年に埼玉県で生まれ、上智大学文学部フランス文学科を卒業されました。大学卒業後、洋書絵本の卸会社やラジオ番組制作会社に勤務された後、フリーの翻訳者として活動を開始されました。フランス語や英語の児童書を中心に、200冊以上の翻訳を手がけておられます。代表的な訳書には、『うんちっち』(あすなろ書房)、『ウィンクルさんとかもめ』、『トラのじゅうたんになりたかったトラ』(岩波書店)などがあります。現在は海外と日本を行き来しながら、翻訳活動を続けておられます。また、エッセイの執筆など、多方面で活躍されています。
おすすめ対象年齢
対象年齢は 4歳頃〜小学校低学年くらいにおすすめです。文章量はやや多めですが、海・魚・かもめ・船といったわかりやすいモチーフが多く、読み聞かせにも向いています。魚がいなくなった理由を考える展開は、自然環境や「必要以上に取らない」という考え方に触れるきっかけにもなります。少し大きい子なら、環境問題の入り口としても楽しめそうです。
レビュー
最初は少し不思議なお話かなと思ったのですが、読み終えるととても現代的なテーマに驚きました。魚を取りすぎれば海が豊かさを失ってしまう——そんな大切なことを、子どもにも自然に伝えてくれます。ウィンクルさんのしっかり自分の考えを曲げずに行動する姿がとてもかっこいいです。ジェラルド・ローズさんの荒々しくも温かみのある海の絵も素敵で、ページをめくるたび潮風まで感じられるようでした。静かな余韻が残る一冊です。

